カウチポテト族は精子が少ない

2013.01.07
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
ノースカロライナ州エイボンで「アウトドア」を楽しむ男性。テレビを見過ぎると精子の数が減る可能性がある。

Photograph by Stephen St. John, National Geographic
 最近発表された研究によると、テレビを長時間見るカウチポテト族は、毎週適度な、あるいは激しい運動をする男性に比べて、精子の数が少ないという。 精子の数は精液の質を示す1つの尺度だ。不思議なことに、アメリカ人男性の精液の質はここ数十年で低下している。精子数の減少は、不妊に関係するだけでなく、その後の精巣腫瘍(睾丸癌)、前立腺癌、心臓血管系の問題の発生とも相関関係を持つ。

 そのため科学者は、精子の数を増やす方法を研究している。その中の1つが、日常の行動を変えることだ。

 この研究を率いたハーバード大学公衆衛生大学院の大学院生(栄養学)オードリー・ジェイン・ガスキンズ(Audrey Jane Gaskins)氏によると、「生活習慣が精液の質にどう影響するかについては、ほとんど何もわかっていない」という。

 運動とテレビ視聴という、自分で変えることのできる2つの行動が「精子の数に大きく影響する可能性があるという発見は、非常に刺激的だ」とガスキンズ氏は話す。

◆精子についての「印象的な」発見

 ガスキンズ氏らはこの研究で、189人の若い男性(大半はニューヨークのロチェスター大学の学生)を集め、身体を動かす活動や、食事、ストレスなど、生活習慣上の因子に関して、質問票に記入してもらった。各被験者はそれから、医療施設内で精液のサンプルを提供した。

 その結果、週に15時間以上運動していると回答した人は、週に5時間以下しか運動しないよりも、精子の数が73%多かった。また、週に20時間以上テレビを見る人は、テレビをほとんどあるいは一切見ない人よりも精子の数が44%少なかった。 「非常に印象的な違いだ」とガスキンズ氏は話す。

 研究チームは、精子数の減少を引き起こすことが臨床的にわかっている、喫煙と肥満という2つの因子の影響を取り除いて比較を行った。

 カウチポテト族の精子が減少する理由は不明だが、ガスキンズ氏によると、2つの説があるという。1つは、運動をすることで体内で作られる抗酸化酵素が増え、酸化ストレスという自然のプロセスで細胞膜が傷つくのが防止されるという説だ。細胞膜が傷つくと、新しい精子の生産が阻害される。

 もう1つの説は、少々議論の種になっている。テレビを見ているときは身体で陰嚢が圧迫され、熱を帯びて精子の生産が阻害される可能性があるというのだ。

 ガスキンズ氏によると、陰嚢の温度が通常の体温より摂氏1度から2度上がると、精子の生産が減速することを示す研究があるという。しかし、陰嚢の温度と精子の生産の間に相関関係はないとする研究もある。

◆男性よ、運動をしよう

 しかし専門家は、この研究は精子の数について、もっとほかの問題も提起していると指摘する。

 フィラデルフィアにあるペンシルベニア病院泌尿器科のフィリップ・マックサビジ(Phillip Mucksavage)氏は、日常的に座っていることの多い被験者の精子も、奇妙なことに、精子の物理的構造と泳動状態という2つの指標では変化が見られないと指摘する。これらの指標は、数値化されていないが、精子の健康を示すものだ。マックサビジ氏は今回の研究に参加していない。

 数は少ないが、「この精子はやはり良好に見える」。

 マックサビジ氏は、もし座ったままコンピューターに向かったり本を読んだりする活動も、テレビを見るのと同じように精子数に影響するという研究だったなら、この結果はもっと説得力を持つだろうと付け加える。

 そのほか、カリフォルニア大学サンディエゴ校の泌尿器学者T・マイク・シエ(T. Mike Hsieh)氏は、この研究は、精子数が問題にされる主な理由である不妊症に関しては、まったく意味を持たないと指摘する。

 1つの精液サンプルだけでは不妊症の診断には十分ではないためだ。不妊症と確定するには、複数の精液サンプルや血液検査など、もっと詳しい分析が必要になると、シエ氏は話す。シエ氏も今回の研究に参加していない。

「テレビを見るのを止めれば不妊症が治る」というようなものではないとシエ氏は言う。

 しかし、どの専門家も一致して認める点がある。運動をしていない人は、もっと身体を動かすべきだということである。

「私はこの結果を1つの証拠にして、患者さんたちにソファーから立ち上がって運動を始めてもらうモチベーションとして利用しようと思う」とシエ氏は話している。

 この研究は「British Journal of Sports Medicine」誌オンライン版に2月4日付けで掲載された。

Photograph by Stephen St. John, National Geographic

文=Christine Dell'Amore

  • このエントリーをはてなブックマークに追加