南極の氷底湖で初の生物発見か

2013.01.06
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南極のウィランズ氷底湖の湖底。水中カメラが着底し、堆積物が舞い上がっている。

Image courtesy Alberto Behar, JPL/ASU, and NSF/NASA
 今年1月下旬、南極の氷床の下800メートルもの深くに眠る湖で微生物が見つかり回収された。この発見は、木星や土星の衛星のように氷で覆われた天体に何が存在するのかという疑問へ光明を投じる可能性がある。 調査チームの一員ブレント・クリストナー(Brent Christner)氏は、ウィランズ湖で数週間の調査を終え、米マクマード南極基地に戻ってインタビューに答えた。同氏によれば新たに見つかった生命体は、地表の生物との繋がりをほとんど持たず、多くは「岩を食べて」生きているようだという。

 そして今回の発見は、木星や土星の衛星のような天体において、炭素不足のなかで生命がどのように生きていくのかを明らかにするかもしれない。「ウィランズ湖の生命体が触れている環境は、氷の天体がそうなっているだろうと思われる環境にそっくりだ」とクリストナー氏は語る。

 同氏によれば「今回の発見は地球の極限生命について多くのことが分かる」という。そして同様の生命体が、地球外でどうやって生きているのかも教えてくれる。

◆氷の中の暮らし

 50名からなる米国の調査チームは1月28日、氷河の下に横たわる50立方キロの湖に到着した。そして掘削孔が閉じ始めるまで、24時間沈まない太陽の下で2日間サンプルの引き上げを行った。掘削に1日、サンプル回収に2日かかったことになる。

 調査チームは現在、4日かかる帰還の途上にある。米国内で徹底した研究を行うため、ウィランズ湖の水や湖底の堆積物とともに、生命体を収めた多数の培養器を持ち帰る。

 まず取り組むことは、ウィランズ湖で今回発見した微生物が掘削の際に持ち込まれたものではないと確認することだ。ケロシンを使った掘削による汚染を回避するため、熱水ドリルを用いたとクリストナー氏は説明した。

 同氏によれば、微生物のDNAを確認するために通常用いられる染料を水に投入したところ、確実に微生物が存在することを示す緑色の輝きがはっきりと現われたという。

 ウィランズ氷河底湖調査プログラムWISSARDの主任生物学者でモンタナ州立大学のジョン・プリスク(John Priscu)氏は、掘削現場で行った作業によって、微小細胞が実在し生きていることを確認したと語った。

「ウィランズ氷河の下にある氷底湖には微生物集団が存在し、それらがマイナス0.5度の暗く冷たい環境下で成長していると言って問題ないと思う」とプリスク氏はメールで説明した。

 そして米国内におけるDNA調査によって「それらがどんな生物か判明し、別の実験とも組み合わせればどのように生きているのか分かるだろう」という。

◆氷床に隠された湖

 南極の氷床下深くに横たわる大規模な湖や川を掘削するプロジェクトは、米国以外にも2つの調査チームが進めている。

 より深いエルスワース湖の掘削を目指す英国チームは、機材の不調により昨年12月に帰還を強いられた。しかしロシアチームでは、ボストーク湖からの湖水コア回収作業が進行中だ。

 昨年2月、ボストーク湖では南極氷床下4キロメートルの深さからコアが引き上げられ大きな話題を呼んだ。この湖は南極氷底湖の中でも最も深く最も大きい部類に属する。ボストーク湖とエルスワース湖はどちらもウィランズ湖よりも冷たい氷の下に存在しているが、出入りする地下水流はウィランズ湖ほど深くないと考えられている。

 南極氷底湖の存在が確認されたのは比較的最近のことで、その大きさが把握できたのはほんの数年前だ。2007年に、スクリップス海洋研究所の氷河学者でウィランズ湖の主調査員であるヘレン・フリッカー(Helen Fricker)氏が初めてウィランズ湖に言及した。

 フリッカー氏らは衛星データを用いて、ウィランズ氷河の表面が2003年から2006年までの間、定期的に上下していることを発見し、その下には湖がある可能性が高いと結論した。

 地球の淡水の約90%が南極大陸に存在するため、地球温暖化の時代にあって南極氷床の動きが持つ重要性は非常に大きくなっている。南極の氷底湖自体は温暖化の影響を受けないとはいえ、氷床との関わり合いを探ることは、今後の南極氷床の振る舞いを予測する上で重要だ。

 たとえば、氷床のどの部分が周辺の海に向かってより速く動くのか解明することは、WISSARDプロジェクトの重要な目的の一つとなっている。アメリカ科学財団は西南極大陸氷床の生物学、氷河、氷の移動について解明すべくプロジェクトを進めており、WISSARDはその一環だ。

◆調査の“山”はこれから

 ルイジアナ州立大学で南極生物学を専門に研究するクリストナー氏にとって、ウィランズ湖の調査研究はまだ始まったばかりに過ぎない。

 マクマード基地からウィランズ湖掘削現場まで、2つの研究設備が運搬トラックの車列によって運ばれた。1つは湖水を手早く分析するためのもので、もう1つは堆積物を調べるためのものだ。

 クリストナー氏のチームは生物サンプルの培養を担当しているため、今後の研究作業は非常に膨大なものになる。同氏は、バクテリアや古細菌を含む採集した微生物の一部は固有種の可能性があるが、多くは深海や地底深くでもよく見つかる種類かもしれないと話している。

Image courtesy Alberto Behar, JPL/ASU, and NSF/NASA

文=Marc Kaufman

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