研究の結果、鳥や哺乳類を殺すのはほとんど迷いネコや野良ネコの仕業であることが明らかになった。しかし、飼いネコも全くの無実ではない。鳥の約3分の1は飼いネコに殺されているとみられる。しかも、ネコが主に殺すのはシマリスやイエミソサザイなどの在来種であり、ドブネズミのような外来種の害獣ではないことも判明した。
ワシントンD.C.にあるスミソニアン保全生物学研究所(SCBI)渡り鳥センターの生態学者であるマラ氏によると、今回の研究は鳥に対する脅威を定量化する取り組みの一環として行われた。ネコはたまたま研究チームが最初に思いついた脅威だった。そのほかにも、風力タービン、建築物、自動車、農薬など、人間の活動に関連した脅威が調査される計画だ。「これらの死因の多くは改善が可能なため」、調査は重要だとマラ氏は言う。今回の研究が「ネコのもたらす影響は予想以上に大きい」ことを政策立案者やネコの飼い主に知らせるきっかけになればと同氏は考えている。
それでは、殺し屋となっている多くの野良ネコたちをどうすればよいのか?
アメリカにおける野良ネコの増加抑制対策は十分とはいえない。「トラップ・ニューター・リターン(TNR)」(捕獲し、避妊手術を施し、返すの意)という個体数管理方法によって、一部の野良ネコの生殖は抑えられているが、野生動物を捕食する行為までは抑えられない。動物愛護団体の「全米人道協会(HSUS)」は解決策の1つとしてTNRを支持しているが、この方法で野良ネコの個体数が大幅に減るわけではないことも認めている。HSUSの上級研究員であるジョン・ハディディアン(John Hadidian)氏は、TNRを施せるネコは200万匹程度にすぎず、しかも「困難で費用がかかる」と話す。今回のような研究が人々の関心を引くことで、例えばネコ用の経口避妊薬といった新たな対策が考案されることを同氏は期待している。
ネコをよく観察している一部の人たちにとって、今回の研究結果は驚きではない。経済学者のガレス・モーガン(Gareth Morgan)氏は先日、ニュージーランドからネコを追放しようと提唱して世界中に報じられた。飼いネコがニュージーランドの鳥類の脅威になっていると考えるモーガン氏は、ニュージーランドからネコを排除しようとWebサイトを通じて訴え、ネコを飼っている人たちには現在のネコを最後に飼うのをやめるよう呼びかけているが、その一方で、ネコもイヌと同じように管理されることを強く求めている。西オーストラリア州で先ごろ成立した法律のように、ネコを登録し、避妊し、マイクロチップを取りつけることを義務づけるべきだとモーガン氏は話す。「飼っているネコを殺せと言っているのではない。ネコを愛するのはかまわないが、管理はしっかりとするべきだ」。
とはいえ、半分近くの家庭が少なくとも1匹のネコを飼っているニュージーランドにあって、これが「感情の絡む問題」だということはモーガン氏も認めている。「飼い主は意識が低いというより、そんなことは考えたこともないというのが実情だ」。
アメリカでも、飼い猫の数は1990年代半ばの約5600万匹から、現在では8000万匹に増えている。種の保存にとっての脅威とも、人間のパートナーともみなされるネコだが、HSUSのハディディアン氏はどこかに歩み寄りの余地があると考えている。「鳥好きの人もネコ好きの人も、同じことを望んでいる。それは、外で暮らすネコが減ってくれることだ」と同氏は述べている。
今回の研究は1月29日付で「Nature Communications」誌に発表された。
Photograph by Bill Curtsinger, National Geographic