コロッセオで紀元1世紀の落書き発見

2013.01.29
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ローマのコロッセオ内部の壁面。2000年前(赤)と観光客の落書きが入り乱れている。

Photograph by Gregorio Borgia, AP
 イタリア、ローマの観光名所コロッセオ(円形闘技場)で、昨年12月から73年ぶりの修復工事が始まり、何世紀にもわたる落書きが見つかっている。堆積した汚れと石灰化した部分を専門家が取り除くと、壁の一部に幾重にも刻まれた文字が現れた(写真)。赤や色あせたグレーの古代の模様の上に、現代の観光客が残した黒い文字が重なっている。 西暦1世紀に建設されたコロッセオは約5万人を収容できた。番号が振られた入り口や覆いのある通路は、観客のスムーズな出入りや、貴族と一般大衆を分けるために設計されたという。

 写真の壁は上層階に続く通路の側面から見つかった。当時上層階では、女性、子ども、奴隷などが安価な椅子に腰掛けて、18メートル下のアリーナで繰り広げられる剣闘士や猛獣の命がけの闘いを見物した。

 通路の薄暗い光でも、背景の白い漆喰(しっくい)に赤で描かれたデザインが簡単に識別できる。現時点でこの部分の意味は不明だが、壁のほかの場所で新たに汚れを取り除いたところ、赤で描かれた勝利のシンボルであるヤシの葉の模様や、「VIND」という文字も浮かび上がった。ラテン語で「復讐」を意味する単語、「vindicatio」の一部と見られる。

 アメリカ、バージニア州にあるワシントン・アンド・リー大学の西洋古典学教授で、ローマの落書きに詳しいレベッカ・ベネフィール(Rebecca Benefiel)氏は、大きな「S」に見える部分の上に薄いグレーで横顔が描かれていると指摘。「古代の落書きで最もよく描かれていた図像だ」と話す。

 また、「ローマ時代の人々は、既存の落書きにはめったに上書きしなかった。また、現代の地下鉄など違って、埋め尽くすような感じではない」という。

 時代は下り19世紀、遺跡として有名になったコロッセオでは、観光客が訪問の記念に落書きを重ねるようになった。「歴史に思いを馳せて、自分もその一部だと跡を残すためだね」とベネフィール氏は語る。

 名前と日付、出身地が定番だ。この壁でも、“J. Milber”氏は、1892年にシュトラスブルク(当時ドイツ領、現在はフランスのストラスブール)からやってきたと世界に知らせたかったようだ。

 ローマ当局は修復工事が完了次第、通路を一般公開する予定だという。いずれ何らかの覆いが設けられて、観光客は自分のサインを後世に残せなくなるだろう。

Photograph by Gregorio Borgia, AP

文=A.R. Williams

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