トンブクトゥ、貴重な古文書も被害

2013.01.29
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トンブクトゥのアハメド・ババ研究所でイスラム文書の保管に気を配る職員。2004年撮影。

Photograph by Ben Curtis, AP
 フランスとマリの連合軍が1月28日にマリ北部にあるトンブクトゥを包囲し、迷路のような町の中でイスラム武装勢力の兵士をしらみつぶしに探し始めた。だが、町の人々によると、武装勢力は数日前に町を離れ、砂漠の中に逃げ込んでしまったという。この町は10カ月にわたり、国際テロ組織アルカイダとの関係を自称するイスラム武装勢力に占拠され、タリバン流の支配を受けていた。 ところが、武装勢力は逃げ出す前に、いくつかの建物や多くの貴重な古文書に火をかけていったと報じられている。実際にどの程度の古文書が燃やされたかについては、情報が錯綜している。

 イギリスの放送局スカイ・ニュースが、アハメド・ババ研究所(Ahmed Baba Institute)の職員という男性のインタビューを28日に公開した。アハメド・ババ研究所は、貴重な書籍や古文書を保管する国立の施設だ。ここに保管されている最古の文書が書かれたのは、この町ができた12世紀にまで遡る。この男性によると、研究所に保管されていた2万点の文書のうち、3000点ほどがイスラム武装勢力により損壊または略奪されたという。

 公開された映像には、研究所の建物の前に、焼けこげた文書の山と思われるものや、散乱した保管専用箱が映っている。

 しかし、ケープタウン大学トンブクトゥ古文書プロジェクトのメンバーが29日にeニュース・チャンネル・アフリカ(eNCA)に語ったところによると、アハメド・ババ研究所のマハムード・ズベール所長から、ほぼすべての古文書は何ヵ月も前に建物から運び出し、安全な場所に移したという話を聞いたという。

◆書かれた遺産

 トンブクトゥの豊かな歴史の中に、書かれた文書は深く根付いている。この町は13世紀に交易とイスラム教と学問の中心地として興隆し、イスラム神秘主義スーフィズムの学者が数多く集まってきた。その学者たちが弟子を集め、トンブクトゥの3つの大モスクに付属する学校が作られた。

 学者たちは、北アフリカを地中海地方やアラビアと結ぶキャラバンのルートを通じて羊皮紙や模造皮紙に書かれた文書を取り寄せた。裕福な家ではこれらの文書を地元の筆写者に書き写させ、そこに装飾を施した。こうして、宗教、芸術、数学、医学、天文学、歴史、地理、文化の各分野の著述を集めた大規模な図書館ができ上がった。

 トンブクトゥ出身の観光ガイド、モハメド・アグハリさんは、「これらの古文書は、この町の本当の黄金だ」と話す。「古文書、私たちのモスク、私たちの歴史、これらは私たちの宝なのだ。それがなければ、トンブクトゥなど何ものでもない」。

 トンブクトゥが軍隊に占領されて文化遺産が脅かされるのは、これが初めてではない。1591年にモロッコ軍が金貿易の支配権を奪うために侵略してきたことがある。モロッコ軍は町を占領する過程でトンブクトゥの学者の多くを殺したり追放したりした。その中に、トンブクトゥで最も有名な教師、アハメド・ババ・アル・マスフィ(Ahmed Baba al Massufi)がいた。アハメド・ババはその後何年もモロッコのマラケシュに抑留され、高官の邸宅で教師として働かされた。ようやくトンブクトゥに戻れたのは1611年のことだった。アハメド・ババ研究所の名前は、この人物を記念して付けられた。

◆文書を隠す

 トンブクトゥには、アハメド・ババ研究所以外にも60以上の私設図書館がある。数千点の文書を集めたものもあれば、貴重な数点だけ揃えたものもある。

 トンブクトゥを拠点に活動する記者で、最近マリの首都バマコに避難してきたシディ・アハメド氏は28日、世界的に知られるマンマ・ハイダラ(Mamma Haidera)図書館やフォンド・カティ(Fondo Kati)図書館をはじめ、ほとんどすべての図書館は、イスラム武装勢力が町を占拠する前に収蔵品を隠し終えたと語った。

「ここの人々は大昔のことを覚えている。古文書を隠すのには慣れている。砂漠に出て、安全になるまで埋めておくんだ」。

 大半の古文書は安全と思えるが、イスラム武装勢力の占領はトンブクトゥに深い爪痕を残した。女性は、髪を覆わなかったり、鮮やかな色の服を着たりすると、鞭で打たれた。女の子は学校に通うことを禁じられ、男の子は徴兵された。

 音楽も禁止された。占領者たちに異を唱えた地元のイマーム(イスラム教指導者)は、モスクの中で語ることを禁じられた。イスラム武装勢力の兵士たちは、崇拝されているスーフィズムの聖人の遺骨を納めた泥と煉瓦の古代の墓所を14カ所、ブルドーザーで破壊した。かつてアフガニスタンでタリバンがバーミヤンの仏教彫刻を破壊したことがあったが、これを思い出させるような所業だ。

 イスラム武装勢力のスポークスマンはこの行為について、トンブクトゥの人々が「偶像を崇拝するのは非イスラム的である」と述べている。

Photograph by Ben Curtis, AP

文=Peter Gwin

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