サンフランシスコ(写真)を始めとする都市は、遠く離れたシベリアなどの気候に影響を及ぼしている可能性がある。

Photograph by Raymond Gehman, National Geographic
 新たに作成された大気モデルから、都市部で発生する大量の熱が、遠く離れた農村部の気温上昇につながる可能性が明らかになった。 都市の気温が郊外や農村より高い理由として、「ヒートアイランド現象」が引き合いに出される場合が多い。自動車やエアコンの室外機などの熱源や、建物や舗装道路などが熱の発散を妨げる結果、気温が上昇する現象だ。

 しかし、カリフォルニア大学サンディエゴ校のスクリップス海洋研究所が作成したモデルでは、北半球の都市は遠くの農村部の温度を最大で摂氏1度上げている可能性が示唆された。

 原因は地球規模での空気の流れだ。

 車や人間活動によって生み出された熱は対流圏上層へ移動し、ジェット気流の一部を乱す。中緯度付近で地球を循環して吹く冷気の帯を、熱によって遮ってしまう。その結果、冷気が上方に押され、赤道からの暖かい空気が入り込むようになり、北欧や北米の一部で気温が上昇する。

 北半球の86の主要な大都市圏は、地表面積の1.27%を占めるにすぎない。しかし、年間に消費するエネルギーは6.7テラワットで、全世界の消費量の42%に相当する。北半球の都市部が地球の気候に及ぼしている影響は大きいという。

 大半の気候研究者は、温室効果ガスが気候変動の唯一の原因と考えてきた。ところが、一部の地域では予測を上回るペースで温暖化が進んでいる。

 スクリップス海洋研究所の気象学者ガン・チャン(Guang Zhang)氏は、その一因はエネルギー消費が生み出す都市部の熱と推測。「これで原因不明の気温上昇を説明できる」。

 チャン氏の研究によれば、影響が最も大きいのはシベリアとカナダ北部だという。ニューヨークやサンフランシスコなどの遠く離れた都市の熱によって、0.8~1度も気温が上昇している。

 アメリカ北部のミネソタ州、ミシガン州でも0.3度上昇するという。今回のモデルは、地球の気候に関する豊富な情報を持つアメリカ大気研究センター(NCAR)のデータを基に作成された。

 地球全体の温暖化は各地の気候に作用しているが、都市部の熱の影響は世界人口の90%近くが暮らす北半球で顕著だった。一方、秋に最も大幅な気温低下が観測されているが、その理由は解明できていないという。

 研究の詳細は「Nature Climate Change」誌で1月27日に発表されている。

Photograph by Raymond Gehman, National Geographic

文=Daniel Stone