イエローストーン湖に外来魚被害

2013.01.23
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大型外来種レイクトラウトの繁殖のあおりを受け、個体数を減らしているイエローストーン・カットスロートトラウト。

Photograph by Jay Fleming
 アメリカ北西部、イエローストーン国立公園の湖にレイクトラウト(学名:Salvelinus namaycush)が違法放流され、固有種であるイエローストーン・カットスロートトラウト(学名:Oncorhynchus clarkii bouvieri)が個体数を減らしている。現地では、漁師を雇って大規模な駆除作業が行われているという。 問題が顕在化したのは1994年だったと、同国立公園の水産生物学者パット・ビグロー(Pat Bigelow)氏は説明する。イエローストーン湖で、イワナの仲間レイクトラウトが見つかったのだ。この外来魚が放流された経緯はわかっていないが、魚種を増やして楽しみたい釣り人が、後先考えずに持ち込んだと考えられる。「典型的な違法放流だ」と、公園の水産生物学者チームの責任者トッド・コール(Todd Koel)氏は指摘する。

 イエローストーン・カットスロート(ニジマスの仲間)は、銅褐色の魚体で背側に斑点があり、喉元にピンク色の筋が入っているのが特徴。非常に美しい魚だが、大きさでは体重23キロを超えるレイクトラウトが勝る。問題は、寿命も20年以上と倍近い外来魚がカットスロートを捕食することだ。

 違法放流で魚種が増えても、トラウトフィッシングは活性化しないとビグロー氏は訴える。カットスロート・フィッシングはこの地域の観光資源であり、経済効果は推定3400万ドル(約30億円)と言われる。問題のレイクトラウトはカットスロートほど簡単には釣れないので、この固有種の代わりにはならない。それどころか、イエローストーン・カットスロートとその遺伝的健全性は、今や保護が必要な状況に陥っている。もともと14種のカットスロートのうち、アルボード(Alvord)とイエローフィン(Yellowfin)の2種は既に絶滅してしまった。

 外来種を駆除する理由はほかにもある。カワウソやミサゴ、クマ、ワシなどは、浅場のカットスロートなら簡単に捕食できるが、深場を好むレイクトラウトにはなすすべがない。コール氏によると、10年前のイエローストーン湖水系には50組のミサゴのつがいが生息していたが、現在は3、4組に激減したという。

 この外来種の発見を受けて、公園側は即座に漁網による捕獲を開始。この10年間は漁師を雇い、大型の漁網を深場に仕掛けて大規模な駆除を進めている。昨年は30万匹以上が網にかかり、10年間の総数は100万匹に達したという。

 しかし、レイクトラウトの完全駆除には時間がかかるだろう。網漁のペースは落ちているが、まだ問題が解消されたわけではない。「勝利宣言にはまだ早い。とにかく先手を打つことが重要だ」とコール氏はコメントしている。

Photograph by Jay Fleming

文=Cathy Newman

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