電波で捉えた超新星爆発の残骸「W50」(緑色に見える)。背景は恒星と宇宙塵が発する赤外線(赤く見える)。枠内は、水中で仰向けになって休むフロリダマナティー。

Photographs courtesy WISE/NASA; (inset) Tracy Colson
 鳥だ、飛行機だ、いや・・・、マナティー? アメリカ国立電波天文台(NRAO)は、わし座にあるガス状の星雲が、絶滅が危惧される水生動物マナティーと、驚くほど似ていると考えている。 この類似に最初に気づいたのは、NRAOの所長室で働くハイディ・ウィンター(Heidi Winter)氏だった。そして、広報資料プロデューサーのタニア・バーチェル(Tania Burchell)氏がすぐに、これは「生物学と天文学という2つの世界を結ぶまたとない機会だ」と気づいた。バーチェル氏は以前、マナティーの保護活動に携わっていたことがある。

「W50」という名前のこの星雲は、形以外の面でもマナティーに似ている。W50は、2万年前に爆発した恒星の残骸だ。爆発の中心では、恒星とブラックホールが互いに回転しあっている。そこから放射される粒子線が、マナティーの傷のように見えるらせん状の模様を描く。

 マナティーにも傷がある。クリスタルリバー国立野生動物保護区の管理者マイケル・ラスク(Michael Lusk)氏は、「フロリダのマナティーの約80%には目に見える傷がある」と話す。マナティーは浅瀬を好むため、船のスクリューによくぶつかるのだ。

 類似点はほかにもある。マナティーは薄暗い水の中にまぎれて見えにくくなるが、この星雲も見つけにくいのだ。1万8000光年ほど離れているため、肉眼ではせいぜい輝く弧が1つ見える程度にすぎない。天文学者は、可視光よりも波長の長い電波を集める望遠鏡を使って、このぼんやりとした星雲の姿を初めて捉えた。

 W50には、新たに「マナティー星雲」というニックネームが付けられた。最初の写真は、1月19日にフロリダ・マナティー・フェスティバルで公開された。「人は心の底で、空でも海でも、自然界への愛情を抱いている。私たちは地上の人間であって、空を見上げたり、海の中をのぞき込んだりする」と、バーチェル氏は話す。

 今年は、危機にさらされる生息地の保護を目的とするアメリカの絶滅危惧種法(ESA)の制定40周年にあたる。ESAが制定された1970年代には700頭しか生息していなかったフロリダのマナティーだが、現在では5000頭まで増えている。米国魚類野生生物局は、マナティーの分類を「絶滅の危機にある種」(endangered)から「絶滅の危機にある種になる恐れがある種」(threatened)に変更することを検討している。

Photograph by WISE/NASA

文=Sasha Ingber