グリーンランドで発見された古代の毛髪(上)のDNA分析によると、アメリカ大陸初のエスキモーはネイティブアメリカンの子孫でもなく、現在のイヌイットの先祖でもない。 一部の考古学研究は、グリーンランド最古のエスキモーを、4500年前に誕生し、ナイフ(下)や銛(もり)などの軽量な道具を使っていたサカク文化と関連付けている。 サカク文化の後に来た集団が、現在のイヌイットの祖先となった。

Photographs courtesy of Bjarne Grønnow
 アメリカ大陸初のエスキモーは、従来考えられていたようなネイティブアメリカンの子孫ではなく、直接アジアから移動してきたという新説が発表された。 この説を発表したのはコペンハーゲン大学古代遺伝学研究所のトム・ギルバート氏率いる研究チーム。グリーンランド北西部の永久凍土から発見されたヒトの毛髪をDNA分析した結果、明らかになったという。毛髪は4000年ほど前の男性のもので、これは古代人の完全なミトコンドリアゲノムを採取できた初めての例だ。

 また驚くべきことに、この最初のエスキモーは現在グリーンランドに住むイヌイットの祖先でもないという。DNA分析の結果、グリーンランドで発見された古代エスキモーとその一族はシベリアから来たことが明らかになった。「古代エスキモーはアラスカからグリーンランドにかけてくまなく存在していたが、にわかに姿を消し、別の集団が移動してきた」とギルバート氏は述べる。

 グリーンランド最古のエスキモーとサカク文化の関連性を示唆する考古学研究もある。4500年前のグリーンランドに生まれたサカク文化と1000年前に生まれたチューレ文化を比較すると、使われていた道具に大きな差異が見られるからだ。

 ギルバート氏のチームによれば、古代エスキモーは寒冷化によって滅んだという。「当時は非常に厳しい自然環境にあったことが明らかになっており、そのため人口が減少していき、ついには壊滅したと考えられる。現在のイヌイットの先祖は、その後登場したまったく別の新しい入植者だ」とギルバート氏は述べている。

Photographs courtesy of Bjarne Grønnow

文=James Owen