クエーサーのエネルギー放出の様子を描いた想像図。新たに見つかったクエーサー・クラスターは、宇宙でこれまでに判明した中では最大の構造だ。

Illustration courtesy M. Kornmesser, ESO
 スケールの大きな話とはまさにこのことだ。新たな研究により、現代の宇宙理論では存在するはずがないとされていた規模の、超巨大な宇宙構造が発見されたのだ。 スローン・デジタル・スカイサーベイのデータを用いた今回の研究で、世界各国の研究者からなるチームは、史上最大のクエーサー・クラスターを発見した。クエーサーは若い活動銀河の一種で、今回見つかったクラスターは直径40億光年という大きさだ。

 この研究を主導したイギリス、セントラル・ランカシャー大学所属の天文学者ロジャー・クロウズ(Roger Clowes)氏は、「この発見は大きな驚きだ。これまで知られていた中で最も大きな宇宙構造の記録を破るものだからだ」と述べている。

 これと比較して、地球が属している天の川銀河は直径わずか10万光年しかなく、さらに天の川銀河が位置するおとめ座超銀河団でも、その大きさは1億光年程度だ。

◆天文学者を悩ませる巨大クエーサー群の存在

 クロウズ氏によると、クエーサーが場合によっては直径7億光年以上という巨大なクラスターを形成することは、かねてから天文学者の間では知られていたという。しかし、今回見つかった、地球から90億光年の距離にあり、73個のクエーサーからなるクラスターの直径40億光年という巨大さは、天文学者を悩ませている。

 というのも、現在の宇宙物理学のモデルでは、宇宙構造の大きさの上限は12億光年を超えることはないと考えられているからだ。

「ゆえに今回の発見は、現在の認識に疑問を突きつけるものであり、謎が解決されるどころか、新たな謎が生まれたと言える」とクロウズ氏は述べている。

 大クエーサー群(LQG)というシンプルな呼び名で知られるこの巨大構造は、宇宙は最も大きな尺度で見た場合にほぼ均一に見えるはずだとする、広く受け入れられている宇宙理論の諸規則とも相容れないように見える。

「これはつまり、宇宙に関する既存の数学的記述が過度に簡略化されていたということなのかもしれない。これは非常に難しい問題であり、複雑性が大幅に上昇するとも考えられる」(クロウズ氏)。

◆初期の宇宙の進化を読み解く手がかりに

 この巨大な宇宙構造の意義はその記録破りの大きさだけにとどまらず、我々が属する天の川銀河をはじめとするさまざまな銀河の進化過程を明らかにしてくれる可能性を持っている。高いエネルギーを放つクエーサーは、宇宙の初期の段階で発生し、最大級の明るさとエネルギーを持つ天体だ。これは大多数の銀河の進化の初期における、ごく短い時期の姿だと考えられている。

 こうした巨大なクエーサー群は、現在の宇宙における超銀河群の先駆け的存在だったのではないかとする説もある。しかし、両者の関係の正確な性質はいまだに謎のままだ。

 また、今回の発見は、一義的にはコンピューターによるモデル化の研究対象ではあるが、望遠鏡を使った観察によってさらに綿密に検証される必要があると、ケンタッキー州ルイビル大学の天文学者ジェラード・ウィリガー(Gerard Williger)氏は指摘する。同氏は今回の研究に関与していない。

「この構造は、ビッグバン以降に宇宙で形成された衝撃波に基づいた予想よりも大きい」とウィリガー氏は述べた。

「何らかのメカニズムがクエーサーをこれほど大規模に、しかも短時間で集めている可能性が高い。このメカニズムは初期の宇宙の状態に関連しているとも考えられる」。

 今回のクエーサーに関する研究は、「Monthly Notices of the Royal Astronomical Society」誌のオンライン版に1月11日付で掲載された。

Illustration courtesy M. Kornmesser, ESO

文=Andrew Fazekas