地震予知の実現に一歩前進か

2013.01.07
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2007年8月16日、マグニチュード8の巨大地震で壊滅的な被害を受けたペルーの都市ピスコ。

Photograph by Dado Galdieri, AP
 今からおよそ2300年前、コリンティアコス湾沿岸にあったとされる古代ギリシャの都市ヘリケで、ネズミ、ヘビ、昆虫などが大挙して逃げ出す騒ぎがあった。古代ローマの著述家クラウディウス・アイリアノスが当時の様子を記している。「動物たちが逃げ出したその夜、地震が起こった。ヘリケは巨大な波に飲み込まれて海に沈み、跡形も無くなった」。 以来、現在に至るまで幾世代もの科学者や民俗学者らが、さまざまな方法で地震予知を試みてきた。だが、動物の行動や気象の変化、揺れを記録する地震計などはいずれも、地震予知の十分な手掛かりにならなかった。

 究極の目標は、天気予報と同程度に先が読める仕組みだ。地震発生の数分前に警報を発令できれば、壁の倒壊や天井の崩落から身を守り、原発などの危険施設を安全に停止することも可能になる。さらに、ハリケーン襲来時と同じような避難計画には、数日前の正確な予測が必要だ。

 まず、小さな前震のパターンが有力な手掛かりとして着目された。前震は、特定断層の一部を破壊したり断層にかかる応力を変化させ、より大きな規模の地震を引き起こすきっかけになると考えられている。だが、そのエネルギー波の特徴だけでは、後に発生する本震の規模を確実に判定するには不十分だ。

 現在、活断層がずれる直前の地電流の変化を監視しようという研究も進められている。

◆“地中の雷”を手掛かりとした地震予知

 アメリカ、マサチューセッツ州ケンブリッジのStellar Solutions社が出資するプロジェクト「QuakeFinder」のエンジニア、トム・ブライアー(Tom Bleier)氏によると、地震が起こる際、岩盤の「異常な変動」に伴って強い電流が発生するという説がある。

「極めて強力な電流で、マグニチュード6の地震では10万アンペア程度、7だと100万アンペア程度にもなる。いわば、地中で雷が発生していると言ってもいい」とブライアー氏は話す。

 ブライアー氏らの研究チームは、電流測定のプロジェクトに巨費を投入。カリフォルニア州を始め、ペルー、台湾、ギリシャで、断層線沿いに磁気センサーを設置した。ブライアー氏によると、「カリフォルニア州のサンアンドレアス断層で観測される磁気パルスは、通常1日10個程度になる」。

 そして、岩盤などの摩擦が引き起こす静電気に付随するバックグラウンド電流に注目していたブライアー氏は、巨大地震の発生前にそのレベルが急激に上昇するはずと予測。マグニチュード5~6の地震数件について、その発生前に考えていた通りの前兆現象を観測できたという。「パルスは、おそらく1日150~200個程度まで増えるのではないか」。

 ただしパルスの発生要因には、地球内部の偶発的な事象はもちろん、雷や太陽フレア、あるいは道路設備、芝刈り機、トラクターのエンジンなどが引き起こす電気的な干渉など、岩盤の変動以外にもさまざまな要素がある。

 そのため、ブライアー氏らの観測結果がすべての地震に共通する現象だと断定するには、観測対象となった地震の件数がまだ十分とは言えない。

 それでもブライアー氏は、地震予知に一歩近づく大きな足掛かりになると感じているようだ。同氏らの研究チームは近く、実際に地震予知を開始する予定だという。

Photograph by Dado Galdieri, AP

文=Richard Lovett

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