12月11日、カリフォルニア州サンタクルーズ、プレジャーポイントのビーチに打ち上げられたアメリカオオアカイカの死体。

Photograph by Chris Elmenhurst, Surf the Spot Photography
 12月月初旬、カリフォルニア州サンタクルーズ郡キャピトーラの海岸に数百匹のアメリカオオアカイカが打ち上げられ、死んでいるのが発見された。数日のうちに、付近の海岸はイカの死体で埋め尽くされるほどになった。その後の報道によると、サンタクルーズから南のアプトス、パシフィックグローブに至るカリフォルニア州中部の海岸各地で、同じような光景が見られたという。死んだイカの数は、推定で数千から数万匹に上る。 アメリカオオアカイカ(Dosdicus gigas)は、成長すると体長1.5メートルにもなることがある。この巨大なイカが、なぜ大量に海岸に打ち上げられることになったのか、科学者の間でもちょっとした謎とされている。米国海岸大気庁(NOAA)の魚類学者ジョン・フィールド(John Field)氏は、「この種のことはときおり起こるけれども、理由はさまざまで、よくわかっていない」と話す。

◆気候変動の影響?

 フィールド氏によると、「(アメリカ)西海岸では、過去10年でアメリカオオアカイカが打ち上げられる回数が次第に増えている」という。「この間に、おそらく気候変動の影響でイカの群れの生息域が広がり、ときに個体数が非常に多くなることがある」。

 アメリカオオアカイカは、通常はもっと南方のカリフォルニア湾やペルー沖など、暖かい海域に生息している。だが「海水温の高い時期には、もっと北のこのあたりでも見られる」と、カリフォルニア大学サンタクルーズ校(UCSC)の海洋学者ケネス・ブルランド(Kenneth Bruland)氏は話す。

 カリフォルニア沿岸では北風が吹くと海水に循環が起こり、養分に富む冷たい水が深海から持ち上がってくる湧昇という現象が生じる。この秋から冬にかけては湧昇が止まり、海岸近くの海水温が上がっている。ブルランド氏は、気候変動と、それにより生じた酸素濃度の低い海域とが、アメリカオオアカイカが北に広がってきた「大きな要因である可能性がある」と指摘する。

◆温暖化は無関係?

 アメリカオオアカイカの大量死の要因が気候変動にあるとする考えには異論もある。モントレー湾水族館研究所(MBARI)の海洋生物学者フランシスコ・チャベス(Francisco Chavez)氏は、「地球温暖化(や酸素濃度の変化)は、これに関係していないと思う」と話す。同じくMBARIのヘンク・ヤン・ホビング(Henk-Jan Hoving)氏も同じ考えだ。アメリカオオアカイカは、ほかの大半の生物が避けようとするような酸素の少ない環境でも繁殖するという信じ難い能力を持っているとホビング氏は指摘する。またホビング氏は、このイカは「極めて俊敏な捕食者」で、理由もなく浅瀬に取り残されるようなことは、特にこれほど多くの数では、考えにくいと話す。

◆中毒の疑いも

 アメリカオオアカイカの大量死の原因としては、ほかに有害な藻類の大量繁殖も考えられる。ある種の藻類は、ドウモイ酸などの毒物を水中に放出する。この毒物に触れた野生生物は、能力に支障をきたすことがある。このような藻類が大発生し、イカの方向感覚を失わせる直接的な役割を果たしたのではないかと推測する科学者もいる。

 大量のイカが方向感覚を失って海岸に打ち上げられた可能性はある。しかし証拠はまだ不十分だ。カリフォルニア大学サンタクルーズ校(UCSC)の植物プランクトン生態学者ラフィ・クデラ(Raphe Kudela)氏は「イカが毒にさらされるということは起こりうるが、合理的な理由から、そうなった可能性は低いと考える」と指摘する。「私の研究室はサンタクルーズのミュニシパル・ワーフで毎週藻類と毒物をモニターしているが、この1カ月ほどは全体にほとんど、あるいはまったく毒物が検出されていないし、毒を放出することのある藻類もほとんど見つかっていないのだ」。

 カリフォルニアの浜辺の異様な光景を何が現出させたのか、明確な答えは見つかっていない。ひとつだけ明らかなのは、カモメやアシカなど、沿岸の捕食者たちが喜んで浜辺をきれいにしてくれるだろうということだ。

Photograph by Chris Elmenhurst, Surf the Spot Photography