ヒイラギの葉、トゲ発生の仕組みが判明

2012.12.21
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ヒイラギの葉がトゲを生やし、葉を食べようとする外敵に対抗する仕組みが、新たな研究で明らかになった。枠内は、1本のヒイラギの木から採取された5枚の葉。

Photographs by Robin Smith, Photolibrary/Getty Images; (inset) Emmanuel Lattes, Alamy
 クリスマスシーズンには至る所で目にするヒイラギは、その葉の鋭さでも知られている。しかし、同じ木に生えているものでさえ、すべての葉がトゲを持っているわけではない。新たな研究により、ヒイラギの木がより鋭いトゲを持つ葉を作り出すメカニズムが解明された。しかも、臨機応変にトゲのある葉を生み出せるようだ。 今回の研究では1本のヒイラギの木にさまざまな形の葉が存在する理由について、葉をエサにする動物の行動と、こうした環境からの圧力に対する、ヒイラギの側の分子レベルでの迅速な反応が合わさった結果であることが示唆されている。

 この研究は、スペインの科学研究最高評議会(CSIC)に所属するカルロス・エレーラ(Carlos Herrera)氏の主導により、スペイン南東部で行われた。研究チームはセイヨウヒイラギを調査した。ヒイラギは、他の植物と同様に、同時に異なる形状の葉をつけることがある。この現象は異形葉性と呼ばれる。今回調査の対象となった40本のヒイラギのうち39本で、トゲの有無など、異なる形状の葉がついていることが確認された。

 一部の木には、野生のヤギやシカが食べたとみられる形跡があった。こうした木では、根元の近くから高さ2.5メートルまでの葉はトゲが多く、それより高い位置にある葉にはトゲがないものが増える傾向があった。研究チームはさらに、ヒイラギの木がこれほどまで迅速に葉の形を変えられる仕組みの解明を目指した。

 1本の木に生えるすべての葉は、遺伝子的には一卵性双生児の関係にあり、まったく同じDNA配列を持っている。研究チームはDNA内でメチル化と呼ばれる化学的プロセスの痕跡を調べ、葉の形状の変異が環境に対する対応なのか、遺伝子の変化によるものなのかを突き止めようとした。メチル化では、DNAに変化が起きるが、その変化は生物の遺伝子配列には及ばない。調査の結果、動物による捕食とトゲのある葉の発生、メチル化の間に関連性があることが判明した。

「ヒイラギの場合、トゲのある葉のDNAはトゲのない葉に比べて著しくメチル化の度合いが低いことが判明した。このことから、葉の形態に変化をもたらす根本の原因は、メチル化の違いであると推測される」とエレーラ氏は述べている。「今回の研究の新しい点は、広く知られているこうした葉の形態の変化を、DNAのメチル化のパターンの変化と関連づけたところにある。メチル化はDNAの配列の変更によらずに起きる“エピジェネティック”な変化だ」。

 エピジェネティックな変化は、DNA配列の変異とは無関係に起きる現象だ。

「Botanical Journal of the Linnean Society」の編集主幹で、イギリスの王立植物園キューガーデンで遺伝学部門の責任者を務めるマイク・フェイ(Mike Fay)氏も、「異形葉性はよく知られた種に見受けられる、わかりやすい特徴で、捕食が原因で起こると考えられていた。だが今まで誰も、この現象が起きる具体的なメカニズムを提起できないでいた」と指摘する。その上でフェイ氏は「新たな研究により、異形葉性が起きる仕組みの理解に向けて大きく一歩を踏み出したと言える」と今回の研究を評価した。

 エレーラ氏はさらに、「この研究結果は植物の保護について明確かつ重要な意味を持つ」と意義を語っている。生息地喪失により遺伝的変異が著しく狭まった自然個体群においては、より時間のかかるDNAの変化を待つことなく迅速に対応する能力が、加速する環境変化の中で生き残るために役立つ可能性がある。ヒイラギの適応能力は、植物の保護について多くの懸念が起きてる中で、「今後に向けた明るい材料だ」とエレーラ氏は述べた。

 この研究は12月13日付で「Botanical Journal of the Linnean Society」誌のオンライン版に掲載された。

Photographs by Robin Smith, Photolibrary/Getty Images

文=Christy Ullrich in Ethiopia

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