パンダの起源は中国ではなくヨーロッパ

2012.12.05
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ジャイアントパンダの最古の近縁種、クレトゾイアルクトス・ベアトリクス(Kretzoiarctos beatrix)の想像図。現在のスペインに存在した、湿潤な森林地帯に生息していた。

Illustration courtesy Jose Antonio Penas, SINC
 ジャイアントパンダの最古の近縁種がスペインで発見された。パンダの起源は中国ではなく、ヨーロッパに行き着くようだ。 およそ1100万年前の化石で、スペイン北東部のサラゴサ市近郊にある発掘現場で見つかった数個の歯から、「アグリアルクトス・ベアトリクス(Agriarctos beatrix)」と名付けられていた。アグリアルクトス属は800~900万年前のヨーロッパに暮らしていたクマ科の絶滅動物で、パンダの祖先とみられる。

 しかし今年の春に顎の化石も発見され、ハンガリーのアグリアルクトス属化石と比較分析した結果、独立した新属と判明。「クレトゾイアルクトス・ベアトリクス(Kretzoiarctos beatrix)」と命名された。

「クレトゾイアルクトスが出てきたからには、ジャイアントパンダの起源はさらに数百万年遡る。最古の近縁種だろう」と、研究を主導した国立自然科学博物館(マドリード)の古生物学者フアン・アベジャ(Juan Abella)氏は言う。

「つまり、パンダのふるさとは中国ではない。南西ヨーロッパの温暖湿潤地域だ」と、同氏は今年5月に話している。

◆パンダとの共通点

 クレトゾイアルクトスは、動物園のパンダと共通する特徴をいくつか備えている。

 アベジャ氏によると、顎の化石から固い植物を主食とする雑食性とわかる。また、現生の小型のクマ科動物もそうだが、木に登る能力にも長けていたという。「当時の南西ヨーロッパの森林地帯では、アンフィキオン(別名:ベアドッグ。現在は絶滅)などの大型肉食動物から逃れるため、素早く木に登っていたはずだ」。

 ただしその体重はわずか60キロで、現生のパンダはもちろん、マレーグマやメガネグマよりも小さいという。

◆移動経路

 パンダの祖先がヨーロッパから中国に渡った経緯は、いまだ明らかになっていない。

「穏やかな気候であれば、クマ科の動物にとって移住は容易だったはずだ。1100万年前のヨーロッパ南西部は温暖かつ湿潤で、出発地点としての条件は揃っていた」とアベジャ氏は話す。

 クマ科の動物は、たいてい陸上を歩いて移動する。古代ヨーロッパではパラテチス海が大陸を分断、陸上移動を妨げていた可能性もある。しかし、クレトゾイアルクトスが生息していた中期中新世には、この海は縮小を始めていたという。

「中国まで到達したかどうか、確かなことはわからない。しかし、スペイン以外では化石が見つかっていないのが現状だ」とアベジャ氏は述べている。 少なくとも一風変わったクマだったのは間違いないだろう。

 詳細はオンラインジャーナル「PLoS ONE」に11月14日付けで掲載されている。

Illustration courtesy Jose Antonio Penas, SINC

文=Christine Dell'Amore

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