主星(中央)に“食べられて”いる惑星WASP-12b(想像図)。大きさは木星の1.4倍ほどという。

Illustration courtesy Ann R. Feild, STScI/NASA
 ある太陽系外惑星が、恒星によってゆっくりと生命を奪われている。この死にゆく巨大ガス惑星の大気からはぎ取られた物質は、皮肉にも惑星自身の“死に装束”であるかのように、惑星とその主星をすっぽり包んでいるという。 2008年に発見された惑星WASP-12bはいわゆるホット・ジュピターで、親星から非常に近い軌道を周回している。地球から1100光年の距離にあるWASP-12bは主星とあまりに近く、1年は地球上のわずか1日と少ししかない。互いに接近しすぎているため、死にゆくこの惑星では主成分のガスが主星の高温によって蒸発し、宇宙空間に噴き出していると考えられている。

「現時点で最も考えられる可能性として(中略)、この惑星はあと10億年ほどで質量の大半を失うだろう」と、今回の研究を指揮したイギリス、オープン大学の天体物理学者キャロル・ハズウェル(Carole Haswell)氏は述べる。地球の推定寿命が90億年であることを考えると、比較的短い時間だ。

◆惑星の“死に装束”

 主星の熱で蒸発したガスは、超高温の雲となってWASP-12bを取り巻いていると予想された。そのような惑星を包む雲は、過去に他の2つのホット・ジュピターの周囲で検出されている。

 ハズウェル氏の研究チームがNASAのハッブル宇宙望遠鏡を使って観測したところ、予想どおりWASP-12bが非常に拡散したガスの雲に包まれている証拠が見つかった。ただし、その雲は予想よりはるかに大きかった。「研究で新たにわかったことは、この恒星‐惑星系全体がすっぽり包まれているということだ」とハズウェル氏は述べる。

◆ベールの陰で

 もう1つ、WASP-12bを包む雲が通常と異なるのは、その雲にマグネシウム元素が多く含まれているらしいことだ。マグネシウムは主星の光を一部吸収するため、それ以外の光では惑星が検出されるのに、近紫外線の光で見ると系全体が姿を消してしまう。

「まるで、惑星が悲惨な形で消滅させられつつあるのを(中略)、主星が幕を引いてこの浅ましい出来事を隠そうとしているかのようだ」とハズウェル氏は述べている。

 他のホット・ジュピターを包むガスの雲も、同様に天体の姿を覆い隠す特性を有するのではないかと考えられているが、現時点で確かなことはわかっていない。

◆大気の散逸

 オーストリア学術アカデミー宇宙研究所の天文学者ヘルムート・ラマー(Helmut Lammer)氏は、今回の発見は系外惑星の磁場の構造と強さを解明するのに役立つという点で重要だと述べる。そのような情報は、系外惑星と太陽系の惑星を比較する上で有用だ。

「磁場によっては(中略)、マグネシウム(の原子)が障害物の前や周囲に蓄積することがある。例えば、バウショック(弧状衝撃波)として知られる惑星の磁場の外縁部の前などであり」、これらの特性は惑星が主星の前を横切るときに検出されるとラマー氏は言う。同氏は今回の研究には参加していない。

 パリ天体物理学研究所の天文学者アルフレッド・ビダル・マジャール(Alfred Vidal Madjar)氏は、WASP-12bの新たな観測結果は、「散逸」と呼ばれる仮説プロセスを証明するものだと述べる。散逸とは、ホット・ジュピターから水素があまりに急速に出ていくために、マグネシウムを含む他の化学元素までもが一緒に宇宙空間に運び出されることだ。

 ガスの雲にマグネシウムが含まれることは、「この“散逸”メカニズムの信憑性を高めている」とビダル・マジャール氏は言う。同氏は今回の研究には参加していない。

 WASP-12bと同じくらい主星との距離が近い他のホット・ジュピターは、ほぼ確実に同様のガスの雲に包まれていると考えられている。主星からもっと離れているか、主星がそれほど高温でない場合は、おそらくガスの雲は存在しないという。

 今回の研究成果は、「Astrophysical Journal」誌の11月20日号に発表された。

Illustration courtesy Ann R. Feild, STScI/NASA

文=Andrew Fazekas