恒例のベネチア冠水、その対策は?

2012.11.14
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記録的な高潮により浸水したイタリア北部、ベネチア。観光名所のサンマルコ広場には、年中行事を楽しんでしまおうと集う人々もいる(11月11日撮影)。

Photograph by Luigi Costantini, Associated Press
 冬の洪水は“水の都”でも珍しくない。しかし、ロイター通信によれば、11日には1872年の観測開始以来6番目の高さとなる1.5メートルの水面上昇を記録したという。 アメリカ、フロリダ州にあるマイアミ大学の地球物理学者シモン・ウドウィンスキ(Shimon Wdowinski)氏は、「満潮と雨が重なると洪水になる。(最近は)強い南風が吹いていたため、潮位がさらに高くなったのだろう」と説明する。

 地元の人たちが言う「アックア・アルタ(異常潮位現象)」が起きても、ベネチアの大部分にはまず影響がない。ところが12日は街の4分の3が浸水してしまった。13日現在、水位は下がり始めているが、元に戻るまでにはしばらくかかるかもしれないとウドウィンスキ氏は話す。「ベネチアは潟(ラグーナ)の上にあり、3つの水路でアドリア海とつながっている。今回のように大雨が降ると、水が流れ出るまでに時間がかかる」。

◆モーゼ計画:可動式防潮堤

 度重なる冬の洪水から街を守るため、防潮堤を設けるモーゼ計画が進行している。ベネチアの潟(ラグーナ)とアドリア海を結ぶ3つの入り江の計4カ所に、中空の巨大鋼製パネルを78枚設置して、可動式防潮堤を建設する巨大プロジェクトだ。2003年に着工し、2014年の完成が予定されている。

 大規模な高潮で洪水の恐れがあるときには、パネルの内部に圧縮空気を送り込む。防潮堤が海底からせり上がって、街の浸水を防ぐ仕組みだ。潮が引いた後に空気を抜けばパネルは海面下に沈み、入り江は普段の姿を取り戻す。

 しかし2014年の完工を迎えるまで、「できることはあまりない」とウドウィンスキ氏は述べている。

 同氏の研究チームが「Geochemistry, Geophysics, Geosystems」誌で2012年に発表した研究では、年間約2ミリの地盤沈下も一因としている。

◆海水を地下に注入して地盤上昇?

 イタリア、パドヴァ大学の水文学者ジュゼッペ・ガンボラティ(Giuseppe Gambolati)氏は、地盤沈下を食い止めるだけでなく、地盤を持ち上げるために地下層への海水の注入を提案している。

 ベネチアの街に直径10キロの円を描く12本の井戸を掘り、10年間で1500億リットルの海水を地下へ注入し、地盤を30センチ程度上昇させるという計画だ。「海水を注入した地層が膨張して、沈下の進行を食い止める。地層が安定したら、今度は隆起を促していく」とガンボラティ氏は説明する。

 地下層に水を注入する技術は、石油採掘業者がカリフォルニアやカナダで地盤を持ち上げるために使用しているが、都市で試みられたことはないとウドウィンスキ氏は言う。「とても興味深いアイデアだが、都市に構造的なダメージを与える可能性もある。別の場所でテストができたらいいのだろうが」。

 ただし、気候変動のシナリオが悪い方に転んでも、ベネチアの街はそう簡単に水没しないと、科学者たちは口をそろえる。ウドウィンスキ氏も、「海面が9メートルほど上昇すれば話は別だが。100年後でもまずあり得ないだろう」と話している。

Photograph by Luigi Costantini, Associated Press

文=Ker Than

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