気候変動でアラビカ種コーヒーが絶滅?

2012.11.09
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
コロンビアで栽培されているコーヒーの木。アラビカ種コーヒーの野生種が危機に瀕しているため、こうした栽培種にも悪影響が及ぶ恐れがあるという。

Photograph by Jose Miguel Gomez, Reuters
 世界中の人々が愛飲するコーヒーは、1日に16億杯が消費されている。しかし、イギリスの王立植物園キューガーデンがこのほど発表した研究結果によると、一番飲まれている野生のアラビカ種が2080年までに絶滅する恐れがあるという。気候変動が原因だ。 野生種に限った話なので深刻な状況とは思えないかもしれないが、市場に出回るコーヒー豆はその野生種を基にした栽培種から収穫されている。野生種が絶滅すると、栽培種も遺伝子的な面からさまざまな脅威に弱くなる危険性がある。その結果、やがては私たちの口に入るコーヒーの品質が低下し、価格が上昇するかもしれない。

「元来アラビカ種は病気や害虫に弱く、生産性の面で問題が多い。生産者は、常に野生種を利用して遺伝的多様性を維持している」と、キューガーデンによる今回の調査プロジェクトを主導したアーロン・デイビス(Aaron Davis)氏は話す。

 栽培種のコーヒーは、大きく分けてアラビカ種(野生種の「Coffea arabica」由来)と、ロブスタ種(「Coffea canephora」由来)の2種に限られる。しかし、コーヒーの木を15年間調査してきたデイビス氏によると野生種は125以上あり、しかも未確認の種がさらにあるという。

「調査し始めて最初に驚いたのはその点だ。非常に重要度の高い作物だが、いまだに全種の解明には至っていない。そして、そうした野生種の中に有効な遺伝子を持つ種がある」。

◆アラビカ種の危機

 国際コーヒー機関によると、アラビカ種は世界の生産量の7割を占めており、コーヒー産業の中核を成しているという。しかし、その大部分の先祖は17~18世紀にエチオピアで採取されたごく少数の原木に溯る。遺伝子プールが狭く(遺伝子の多様性が低く)、「それがひ弱さにつながっている」とデイビス氏は指摘する。

 今回の研究では、フィールド調査とコンピューター・モデリングを組み合わせ、さまざまな気候条件下で、野生のアラビカ種にどのような影響が出るかシミュレートされた。栽培種の原産地でアフリカ最大のコーヒー生産地エチオピアと、南スーダンの一部の地域に焦点が当てられている。

 その結果は「非常に深刻」なものだった。最良の気候条件下でも、2080年までにアラビカ種に適した生育地の66%が消失。最悪の条件下に至っては、ほぼ全滅する恐れがあるという。しかもこの想定には気候変動だけが条件として取り入れられており、森林破壊は考慮されていない。

 デイビス氏のチームは4月、南スーダンのボマ高原(Boma Plateau)を訪れた。当初はコーヒー生産の可能性を探るための調査だったが、深刻な野生アラビカ種の状況に気付いたという。

「現地の森林を調査してから、救済措置を探る方に目的が変わった」と同氏は言う。研究では、ボマ高原の標本をできるだけ早く種子バンクに保管する必要性を提唱している。2020年までに絶滅するおそれがあるためだ。

 アメリカ、ミズーリ植物園の植物学者ピーター・レイブン(Peter Raven)氏は今回の研究には関係していないが、「アラビカ種は通常、熱帯地域の高地の植生で生育する。既に生態系の中で危機的な状況に追い込まれているため、気温が上昇すると行き場を失ってしまう」と話す。

 国連開発計画(UNDP)がまとめたレポートによると、アラビカ種コーヒー生産世界第3位のエチオピアでは、1960年以降、年間平均気温が1.3度上昇しているという。

「生育に適した気温の幅はごく狭く、野生種も栽培種も気候変動には弱い」とデイビス氏は語る。「アラビカ種が気候変動の進行に脅かされていることは、単純なシミュレーションでもすぐにわかる。このまま放っておけば、やがてはコーヒー生産に悪影響が出るのは間違いない」。

 今回の研究結果は、「PLOS ONE」誌に11月7日付けで掲載されている。

Photograph by Jose Miguel Gomez, Reuters

文=Amanda Fiegl

  • このエントリーをはてなブックマークに追加