ワニのアゴは人間の指先より敏感

2012.11.09
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テキサス州で撮影したアリゲーター。クロコダイルとは異なり、敏感に触覚を感知する斑点は口吻だけにある。

Photograph by Matt Hansen, My Shot
 クロコダイルやアリゲーターは頑丈な皮膚と鋭い歯を持った凶暴な動物だが、意外に敏感な面もあるようだ。その口吻は人間の指先よりも触覚が鋭いという。 ワニ目のうち、アリゲーターの頭部には、上下のアゴ、口内、歯の間などに、ドーム状に隆起した小さな黒い斑点が約4000個ある。クロコダイルでは頭部以外にも存在し、約9000個に達する。

 隆起は100年以上前から知られており、「外皮感覚器(ISO:Integumentary Sensory Organ)」と名付けられていたが、その役割については未解明だった。

 防水の機能や、獲物が発するわずかな生体電気を検出する役割、塩分を感知して安全ではない飲み水を避けるためなど、さまざまな説が唱えられている。

 アリゲーターを対象にした2002年の研究では、謎の一部が解けた。水1滴が引き起こすさざ波でも感知でき、獲物のかすかな動きを把握できると判明したのだ。しかし、詳しい仕組みや感度については、突き止められなかった。

◆わずかな刺激も検出

 この謎に挑んだのがアメリカ、ヴァンダービルト大学の学生ダンカン・リーチ(Duncan Leitch)氏だ。指導教授である生物学者ケン・カターニア(Ken Catania)氏と協力して研究を実施した。

 凶暴なワニのとりわけ敏感な鼻を突く必要があるため、まずリーチ氏はワニの扱い方を学んだ。次に、保護されたワニの中から比較的小さな個体と、商用に養殖された個体を取り寄せた。

 18匹のアメリカアリゲーターと4匹のナイルワニの感覚器を調べたところ、圧刺激や振動を感知する受容器と、むき出しの多数の神経終末が存在すると判明。

 隆起物は塩分や電気には反応を示さなかったが、VON FREY式フィラメントで圧刺激を与えると反応した。毛髪ほどの決まった細さのワイヤーで、感覚のしきい値を測定する機器だ。一部の感覚器は、この方法では測定できないほどわずかな圧力刺激も感知しており、触覚が極めて優れているとわかった。

「これほど敏感とは予想外だった。試しに目を閉じて互いの指先を突いてみたが、何も感じないくらいの刺激なんだが」とリーチ氏は振り返る。

 次に、死骸を使用して外皮感覚器の神経を染色、脳への伝導経路をたどった。その結果、咬合や咀嚼、嚥下に関係する三叉神経系につながっていることが明らかになった。

◆敏感な理由

「今回の研究成果は非常に有意義だ。このような小さな感覚器官の謎を解く手掛かりになる」と、アメリカ動物園水族館協会(Association of Zoos & Aquariums)でワニを担当するケント・フリート(Kent Vliet)氏は評価する。

 しかし、アリゲーターやクロコダイルに、それほど敏感な皮膚が必要なのだろうか? 口吻で獲物を感じ、飛びかかっているのは確かだとリーチ氏は説明する(同氏は、まさにその瞬間を映像に収めている)。

 また、ワニの母親は口吻を使って、孵化した赤ちゃんが殻から出るのを助けたり、口にくわえて保護したりする。「まさに鋭い感覚が必要だ」。

 リーチ氏は今後、外皮感覚器の信号がどのように脳で処理されているかを調べる予定。全身に感覚器が広がっているクロコダイルと、口吻だけのアリゲーターの違いも明らかにしたいという。

 研究の詳細は「Journal of Experimental Biology」誌で11月8日に発表された。

Photograph by Matt Hansen, My Shot

文=Shannon Fischer

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