米で急増のリス、投薬で産児制限

2012.10.25
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
暖冬と豊かに実ったエサの影響で、ハイイロリス(写真)の数が増加している。

Photograph by Maria Stenzel, National Geographic
 アメリカ全土でハイイロリスが大量発生している。あらゆる手を尽くして樹上のリスたちの勢いを抑えようと、産児制限を試みる研究者もいる。 暖冬と豊かに実ったエサの影響で、特に東海岸と北東部、中西部で小型哺乳動物のハイイロリスが急増している。キュートな外見に似合わず周囲の環境をめちゃくちゃにしてしまうハイイロリスは、農作物を食い荒らし、建物の配線をかみ切る。皮を剥がされた木は、枯死にはいたらないまでも深刻な被害を受ける。

 増殖を抑えるには、産児制限が最善の選択肢だ。しかし、毎日喜んで経口避妊薬を服用するリスはいないし、子宮内避妊器具(IUD)はそれほど小さくない。彼らの子作りをストップする特効薬はあるのだろうか?

 数十年前からオジロジカなどの産児制限に関する研究が続けられており、リスにも応用できそうな選択肢が2つある。ワクチンを投与して性ホルモンの生成を抑制する、またはコレステロール値を下げる方法だ。性ホルモンはコレステロール分子からつくられる。 1回の接種で何年も効果が持続するワクチンは期待できそうだ。

 アメリカ、コロラド州フォート・コリンズにある野生生物調査センター(National Wildlife Research Center)の元研究者クリスティ・ヨーダー(Christi Yoder)氏は、「ただし、捕まえるには手間暇かかるし、リスの負担になる」と話す。しかも、人件費を含めて1匹あたり50ドル(約4000円)以上の費用が必要だ。

◆ヒマワリの種に薬をコーティング

 残るは2つ目のレシピだ。産児制限の味付けを施したごちそうでリスを誘惑すればいい。サウスカロライナ州ノースチャールストンのクレムゾン大学で薬の投与法を研究するグループが、まさにこの方法を試みている。使っているのはディアザコン(DiazaCon)というコレステロール低下薬だ。

 研究チームは大学内で暮らすリスに投薬する前に、1年の準備期間を設けた。天然資源学科(Division of Natural Resources)の責任者グレッグ・ヤロー(Greg Yarrow)氏は、「ホルモン値が最大になるタイミングを知るために、リスを捕まえて採血し血液検査を行った」、と説明する。

 この研究は学問のためだけではない。クレムゾン大学は10年近くリスに苦しめられている。食い荒らされて失った木が100本以上におよび、撤去、新たな植樹や手入れに100万ドル(約8000万円)以上を費やした。

 研究チームは2012年、ハイイロリスが独り占めしている16カ所に餌箱を設置し、ディアザコンをコーティングした好物の黒いヒマワリの種を与え始めた。ディアザコンは実験用のリスでテストしたことはあるが、野生のリスに使用するのは今回が初めてだ。

 コーティングでピンク色に染まった種は、おそらく味も少し甘い。それでも、リスは「気にしていないようだ」とヤロー氏のもとで研究する大学院生で、プロジェクトのリーダーを務めるクリスティーナ・ダン(Kristina Dunn)は話す。「餌箱のそばに座り、ひたすら食べ続けていた」。

◆ピンク色のリス

 研究チームはあと1年与え続けて、行動に関する情報や生物学的なデータを可能な限り集める予定だ。そして、投薬の効果を分析し、種を食べた個体やその捕食者に副作用がないかどうかを調べることにしている。

 作業のほとんどは面倒なデータ収集だが、簡略化のための対策は講じてある。ディアザコンに混ぜた毒性のない染料は、リスの腹部をピンクに染めてくれる。投薬されたかどうかは一目瞭然だ。「大学内はもうピンクのリスだらけ。大学のテーマカラーに合わせてオレンジにすればよかった」とヤロー氏は口元をゆるめた。

Photograph by Maria Stenzel, National Geographic

文=Shannon Fischer

  • このエントリーをはてなブックマークに追加