超音速ダイブ成功、世界記録を更新

2012.10.15
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「レッドブル・ストラトス」プロジェクトが10月14日に更新した記録の1つ、史上最大のヘリウム気球(資料写真)。

Photograph courtesy Jorg Mitter, Red Bull Content Pool
「今から帰るよ」。10月14日、気球を使って高度3万9000メートルまで上昇させたカプセルから地上へ飛び降りる直前に無線でこう言い、フェリックス・バウムガートナー(Felix Baumgartner)氏は歴史への一歩を踏み出した。 それはあっという間の帰還だった。与圧服に身を包んだ同氏がスカイダイビングの最高高度記録を更新したこのフリーフォールは、落下速度でも史上最高の時速1342キロをマークした。

 オーストリア出身のバウムガートナー氏は挑戦成功後の記者会見で元気そうな様子を見せていたが、関係者の発表によると、フリーフォールの速度はマッハ1.24と音速を超えていたという。超音速の感想を訊かれたバウムガートナー氏は「体感してないので説明するのは難しい。あの与圧服を着ていると、何も感じないんだ」と答えている。

 この「レッドブル・ストラトス」プロジェクトは、数度の延期を経て現地時間10月14日に実施された。米国東部標準時間午後2時を少し回ったころ、アメリカ、ニューメキシコ州ロズウェル上空でバウムガートナー氏はカプセルを開けた。

「ドアを出るときは頭をうんと低くするように」。プロジェクト関係者で唯一バウムガートナー氏と無線で直接つながっていたジョゼフ・キッティンジャー(Joseph Kittinger)氏が注意を促した。同氏は退役した米空軍の元パイロットで、1960年に高度3万1300メートルからダイビングし、それまでのフリーフォール記録を保持していた人物だ。

 その直後、バウムガートナー氏はダイビングを決行し、高さが55階建てのビル、横幅がフットボール場ほどもある史上最大のヘリウム気球の下から飛び降りた。

 フリーフォールの継続時間は4分19秒に及んだ。これはバウムガートナー氏が目指した史上最長記録とはならなかった(記録的な落下速度も影響した可能性がある)。高度約1524メートルでバウムガートナー氏はパラシュートを開いた。

「私ならこんなに上手くやれなかっただろう」とキッティンジャー氏は無線越しに言った。その言葉は、インターネットのライブ中継でバウムガートナー氏のスカイダイビングを見ていた何百万という人々の耳にも届いた。

 バウムガートナー氏は、およそ10分の滞空時間を経て、米国東部標準時間午後2時17分に無事、地上に降り立った。絵に描いたように完璧な着地を見せた後、歓喜した様子で膝をついた同氏は、すぐさま救援のヘリコプターで砂漠から運び去られた。

◆スカイダイビングの殿堂入り

 さまざまな危険が予想された今回の挑戦を前に、バウムガートナー氏は楽観的な様子を保っていた。レッドブルとのインタビューで、同氏は次のように述べている。「最高のチームが私を支えてくれている。私自身もベースジャンプを始めて以来ずっと準備を進めてきた。キッティンジャー氏のような人たちに憧れ始めた幼いころから、この目標に向かって努力してきた。キッティンジャー氏をチームに迎えることもでき、私はこの分野で最高の人材に囲まれている」。

 奇しくも、バウムガートナー氏がダイビングに成功した10月14日は、65年前にチャック・イェーガー(Chuck Yeager)氏が人類初の超音速飛行を実現した日に当たる。バウムガートナー氏もその意味を理解していた。「あれから65年が経過しても、いまだ達成するべき挑戦は残されている。それらを達成する目標をけっして見失ってはならない。私もそうした冒険者の仲間入りができたら嬉しい」とバウムガートナー氏は述べている。

Photograph courtesy Jorg Mitter, Red Bull Content Pool

文=Nicholas Mott

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