天の川銀河の基本尺度を精確に計測

2012.10.01
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国立天文台の新たな解析から得られた天の川銀河の基本尺度。

Illustration courtesy NAOJ
 日本の国立天文台の研究チームは2日、天の川銀河の基本尺度をこれまでより正確に決定することに成功したと発表した。それによると、天の川銀河の質量は従来の推定値に比べて20%増加することになる。 国立天文台は2007年からVERA(VLBI Exploration of Radio Astrometry)と呼ばれる電波干渉計を用いて、地球から天体までの距離を精密に計測している。VERAは三角測量の原理で天体までの距離を計測するプロジェクト。岩手県奥州市、鹿児島県薩摩川内市、東京都小笠原村、沖縄県石垣市の4カ所に設置された直径20メートルの電波望遠鏡で同時観測を行うことで、仮想的に直径約2300キロの巨大な望遠鏡に相当する性能が得られる。

 VERAはこれまでに100を超える天の川銀河内の天体の観測し、そのうち約30天体について正確な距離が報告されている。今回は、過去の計測結果に最新のデータを加えた上で、さらに米国やヨーロッパにあるVLBI装置から得られた測量結果を合わせ、合計52天体のデータを用いて天の川銀河の構造の解析が行われた。50を超える天体を用いて天の川銀河の構造を解析するのは今回が初めての試みだという。

 計測の結果、太陽系と天の川銀河の中心までの距離が2万6100光年であることと、太陽系の銀河回転速度が秒速240キロであることがわかった。このことから、太陽系は天の川銀河内を約2億年で1周していることがわかる。

 秒速240キロという銀河回転速度は、1985年以降考えられていた秒速220キロよりも早く、天の川銀河の回転速度と質量分布に修正を迫る結果となる。

 銀河の回転速度は、銀河の重力と遠心力の釣り合いで決まるため、銀河の質量は回転速度から測ることができる。今回得られた回転速度から、太陽系より内側の天の川銀河の質量を求めたところ、これまでの推定値と比べて約20%も大きい値が得られた。銀河系に存在する天体など可視物質(直接観測可能な物質)の質量はほぼわかっているため、この領域にある暗黒物質(ダークマター)の量がこれまでの推定よりも多いことを意味する。

 暗黒物質とは、宇宙の質量の80%以上を構成すると考えられている目に見えない未知の物質だ。可視物質の5倍ほど存在していると考えられているが、その構成要素については未だ不明のままで、天体物理学者にとっての最大の謎の一つである。

 銀河や銀河団の運動において、可視物質以外の“何ものか”の重力の影響が観測されることから、その存在が間接的に推定されている。例えば、ほとんどの銀河には光学的に観測できる物質が十分あるが、そこから必然的に発生するはずの重力と、実際に観測される重力が一致していないのである。つまり、可視物質があまりにも少なく釣り合いが取れていないのだ。

 現在まで、暗黒物質を構成する粒子は特定されていない。最も有力とされる候補は、WIMP(ウィンプ)と呼ばれる仮説的な粒子のグループだ。WIMPとは、「物質との電磁気的な相互作用がほとんど無い重い粒子(weakly interacting massive particles)」のこと。地球に降り注ぐ暗黒物質の粒子を直接捉えようとする検出実験も素粒子実験物理学者たちによって進められている。

 今回の研究結果は、銀河系の正確な大きさや形状を解明する上で重要な手掛かりにになると期待される。

Illustration courtesy NAOJ
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