VLBIで超巨大ブラックホールに肉薄

2012.09.28
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超巨大ブラックホールから出るジェットの想像図。

Illustration courtesy NAOJ/AND You Inc.
 国立天文台などの国際研究チームは、おとめ座にある銀河M87の超巨大ブラックホールから出るジェットの根元の大きさの測定に初めて成功した。今後、チリ北部のアタカマ砂漠に設置されているアルマなどの望遠鏡を追加して観測網をさらに拡張することで、ブラックホールそのものの電波写真が得られると期待される。 観測にはハワイを含む米国内3か所の電波望遠鏡が用いられた。測定の結果、ジェットの根元の大きさはブラックホール半径の約5.5倍であることがわかった。また、ジェットの根元の大きさは、回転しているブラックホールの場合に予想される値と一致しており、これはジェットの形成・放出にブラックホールの回転が関わっている可能性を示唆している。

◆ブラックホールから放たれるジェットの謎

 宇宙に存在するほとんどの銀河には、その中心に超巨大ブラックホールがあることがわかっている。その中でも活発なものは、光速に近い速度まで加速されたジェットを噴出している。ジェットはブラックホール近くから放出されるプラズマ粒子の流れで、非常に細く絞られていることが特徴だ。しかし、ジェットがブラックホールの近くからどのようにして放出されるのか、物質がなぜこれほど高速に加速されるかはまだ詳しく解明されておらず、現代天文学上の大きな謎として残されている。

 M87はジェットを噴出している超巨大ブラックホールの中で最も銀河系に近い天体だ。この銀河には1兆個以上の星が集まり、地球からおよそ5000万光年の場所に位置する。そのため、ジェットの形成を調べる上で注目され、これまでにも多くの観測が行われている。M87のブラックホールは太陽の約62億倍の質量を持ち、その見かけの大きさは天の川銀河の中心にある超巨大ブラックホール「いて座Aスター」に次いで、全天で2番目の大きさだ。

◆VLBIでジェットの根元を検出

 今回の観測では、波長1.3ミリの電波でM87のジェットを検出することに初めて成功した。観測には米国のハワイ、アリゾナ、カリフォルニアの3か所にある電波望遠鏡群が用いられ、これら3局のデータを合成して巨大な電波望遠鏡を合成するVLBI(超長基線電波干渉計)という技術が用いられた。VLBIは、望遠鏡口径を地球規模にまで拡大することで、結果として現存する望遠鏡の中で最も高い分解能を達成できる。

 その観測の結果から、ジェットの根元の大きさがブラックホール半径の5.5倍であることがわかった。過去の観測結果から、波長1.3ミリのジェットの放射はブラックホールからの距離が半径の2~4倍程度という非常に近い領域から出ていることが示されているため、今回の観測はブラックホールに極めて近い領域でその半径の数倍の構造を初めて捉えたことになる。

 もしブラックホールが回転していない場合、ジェットの根元の見かけの大きさはブラックホール半径の7倍程度になると考えられている。一方、回転しているブラックホールの場合、それよりも小さい値も取ることが知られている。今回得られたジェットの根元の大きさはブラックホール半径の5.5倍なので、この結果はM87のブラックホールが、回転しているブラックホールであることを示している。

◆将来は直接撮影へ

 今回の観測はM87のブラックホール半径の数倍程度の領域に肉薄するものであり、最終的な目標であるブラックホールそのものの直接撮影の実現に近づいたことを示している。さらに、今回の観測によってジェットの形成・放出にブラックホールの回転や磁場が関わっている可能性があることがわかった。今後は、アルマなどの高感度の望遠鏡を追加して観測網をさらに拡張することで、ブラックホールの直接撮像やジェットの放射・加速する謎の解明が期待される。

 今回の研究結果は、「Science」誌オンライン版に9月27日付けで掲載された。

Illustration courtesy NAOJ/AND You Inc.
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