ヒトの精子の動き、初の3D追跡

2012.09.18
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ヒトの精子が卵子に侵入する瞬間。電子顕微鏡で撮影したもの。

Image by David Phillips, Visuals Unlimited
 このほど初めて、ヒトの精子の動く軌跡が3Dで捉えられ、精子の中にはらせん状の軌道をとるものや、きわめて活発に泳ぐものがあることが分かった。 今回の研究は、市販のスマートホンやデジタルカメラに搭載されているのと同程度のセンサーチップを使用して行われた。今回の技術は、男性の生殖能力検査の向上につながるとともに、同程度の大きさの微生物の行動の研究などにも利用できるだろうと研究チームは言う。

 ヒトの精子は、微生物と比べてもさらに小さくて動きが速く、研究が難しいことで知られている。それでも今回の研究チームは、ほかのもっと簡単な対象には目もくれず、この雄性生殖細胞の研究のためにツールの改善を重ねた。なぜなら「精子は生命にまつわる微小組織の中でも特に重要なものの1つ」だからだと、チームを率いたアイドハン・オズジャン(Aydogan Ozcan)氏は言う。

 オズジャン氏らの研究では、精子バンクから入手した精子をシリコンセンサーチップに載せ、精子が動いているところに赤色および青色のLEDライトを別々の方向から照射した。研究の全過程では、合わせて2万4000以上の精子の動きを観察した。個々の精子から赤と青の2つの影ができ、その軌跡がチップに記録された。その後、コンピュータープログラムを使ってそれぞれの影のデータを組み合わせ、精子の曲がりくねった軌跡を再現した。

 従来型の光学顕微鏡では今でも「ごく限られた数の精子しか(3Dでは)観察できない」と、カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)の電気工学科に所属するオズジャン氏は電子メールで取材に応えた。だが今回のセンサー技術ならば「1回の実験につき、1500以上の精子を3Dで追跡できる」。

◆きわめて活発な精子

 これらのデータから、精子の泳ぎ方には明確に異なるいくつかのパターンがあることが分かった。大多数は「典型的」な、おおむね直線上の軌道をとる。

 だが一部の精子は「らせん状」のパターンで動く。これは従来の顕微鏡による観察から、不明瞭ながらも予測されていたことだ。また別のグループは「きわめて活発」と命名された。このグループの精子は頻繁に方向を変え、それまでと正反対の向きに動き出すこともある。

 オズジャン氏によると、精子の健康状態と泳ぎ方のパターンには、今のところ相関関係は確認できていないという。しかし今回の画像化技術によって、将来的にはそうした研究にも道が開けるかもしれない。

 実際今回のセンサーシステムは、ほかの研究テーマにも(赤と青の)光を当てられるだろうとオズジャン氏は言う。たとえば微生物の行動や、精子の品質に薬品やカフェインなどの化学物質が影響を及ぼす可能性についての研究などにも使用できるだろう。

 男性諸氏にとって、自分の“オタマジャクシが元気か”どうかをより正確に把握できる可能性がもたらされるのは言うまでもない。オズジャン氏によれば「この技術か、それを応用したものを、精子の選別や数量化に使うことも可能だろう」

 精子の軌跡の3D測定についての今回の論文は、「Proceedings of the National Academy of Sciences」誌の9月17日号に掲載される。

Image by David Phillips, Visuals Unlimited

文=Ker Than

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