単為生殖で生まれたオスのカパーヘッドと母親。

Photograph by Pam Eskridge and Charles Smith
“単為生殖”は、種を守るための最後の手段ではなく、一般的な現象の可能性がある。アメリカで、交尾をせずに子を作る野生のマムシのメスが初めて確認された。しかも、繁殖相手になるオスが周囲に存在する環境だったという。 大概の脊椎動物は、オスとメスの有性生殖で子を作るが、飼育下のヘビ、コモドオオトカゲ、鳥、サメのメスに限って単為生殖が確認されている。

 父親に適したオスがいない場合、単為生殖は血筋を絶やさない方法としてある程度理にかなっている。しかし、これまでは進化上の珍しい現象と考えられてきた。

 アメリカ、オクラホマ州にあるタルサ大学の生物学者ウォーレン・ブース(Warren Booth)氏率いるチームは、オスが存在する自然環境で妊娠したカパーヘッド(アメリカマムシ)とヌママムシを捕獲。卵胎生で生まれてきた子どもの身体的、遺伝的な特徴を記録した。

 その結果、カパーヘッド22匹、ヌママムシ37匹のうち、それぞれ1匹の単為生殖が判明。ブース氏によれば、驚くほど高い確率だという。

「これほど少ないサンプルから確認された事実は注目に値する」とブース氏は話す。「今後も毎年、同じ個体群のサンプルを採取し、再確認を目指すつもりだ」。

◆単為生殖の謎

 メスのヘビは、なぜオスがいるのに単為生殖したのだろうか?

 まず考えられるのは、生殖方法が限られていた可能性だ。ブース氏によれば、単為生殖が確認されたカパーヘッドは通常より体が小さかったという。オスはより健康そうなメスを選び、体が小さい個体はあぶれたのかもしれない。

 単為生殖はランダムに起きる生殖上のミスと考える専門家もおり、細菌やウイルスが誘因になる可能性をブース氏も調べている。

 単為生殖で生まれた子どもがいずれも1匹だった点も謎だ。通常、カパーヘッドは一度に6~9匹、ヌママムシは最大20匹も出産することができる。

 さらに、子どもはいずれもオスだった。単なる偶然に思えるかもしれないが、単為生殖で生まれた他のヘビもすべてオスで、何らかの理由があるのだろう。

「メスが見つかるかどうかも今後の課題の一つだ」とブース氏は語る。「現実的には、メスが生まれない理由はない。しかし、これまでに確認されたヘビではオスばかりだった」。

 単為生殖で生まれた動物が普通に生殖できるのか、それとも単為生殖が続くのかもわかっていない。多くの場合、単為生殖の子どもはどこかに異常があるか、早死してしまう。ブース氏によれば、基本的には“重度の近親交配”であり、驚くべき事実ではないという。

◆確認された生物はわずか

 単為生殖では、卵細胞の分裂によって生じる「極体」が精子の機能を果たし、卵子を“受精”させる。その結果、生まれた子どものDNAは親とは完全に一致せず、“半クローン”のような状態だ。

 単為生殖は、サメ、爬虫類、鳥(爬虫類の近縁)での確認に限られる。哺乳類の生殖では両親の遺伝子のコピーが必要であり、不可能と考えられている。

 ニューヨーク州立大学ストーニーブルック校の海洋生物学者で、カマストガリザメの単為生殖を発見したデミアン・チャップマン(Demian Chapman)氏は、次のように断言する。「人間の単為生殖が近い将来に起きる可能性はない。ヘビと鳥、サメだけだろう」。

 今回の研究の詳細は「Biology Letters」誌のオンライン版に9月12日付けで掲載されている。

Photograph by Pam Eskridge and Charles Smith

文=Ker Than