2つの小惑星のうち、QC8は直径約1キロで、地球に最も近づいた際の距離は約870万キロと推定される。これは地球と月の間の距離の23倍に相当する。一方、QG42は直径190~430メートルと比較的小型だが、かなり近くまで地球に接近するので、天体観測者にとってはより見ごたえのある観察対象となるだろう。
QG42はおおむね14階建ての建物ほどの大きさで、かなり地球に近づくことから、地球に衝突する恐れのある小惑星(PHA)として正式に認定された。
米東部夏時間9月14日午前1時10分(日本時間14時10分)、QG42は地球に最も近い位置を通過するが、その際の距離は月の公転軌道までの距離のわずか7.5倍の280万キロにすぎない。
軌道の計算を見る限り、QG42が今回のフライバイ(接近通過)で地球に危険をもたらす可能性はないが、この小惑星にとっては過去100年間で最も地球に近づいた事例であり、今後脅威となる可能性はあると、カリフォルニア州パサデナにあるNASAジェット推進研究所(JPL)で地球近傍天体(NEO)プログラムの責任者を務めるドン・ヨーマンス(Don Yeomans)氏は指摘する。
「我々が把握している(QG42と)同サイズ、あるいはそれ以上の大きさを持つPHAは1700個ある。このサイズの小惑星は平均して4万年に一度、地球に衝突するものと考えられている。衝突した場合、そのエネルギーはTNT火薬換算で140メガトンに相当する」と、ヨーマンス氏は述べている。「このような小惑星が衝突した場合、直径約3キロのクレーターができるはずだ」。
あと数時間のうちに、QG42は地球に最接近し、最も明るく見えるようになる。天空での位置を突き止め、観測するには、少なくとも口径12インチ(30センチ)サイズの望遠鏡が必要だ。しかし、インターネットを用いた天体観測サービス、スロー(SLOOH、www.slooh.com)が、カナリア諸島に置かれたロボット望遠鏡でこの小惑星を追い、Web上でフライバイの様子を中継することになっている。この中継は米国東部夏時間午後7時(日本時間午前9時)から始まっている。
地球の軌道を横切る1キロ以上の大きさの天体のうち90%は記録されており、その中に当面脅威となるものはないと、ヨーマンス氏は解説する。そのため、現在の焦点は、QG42のような、140メートル以上の大きさの地球近傍天体の追跡に移っているという。
「このグループでも、40%程度の天体が特定されており、今のところ脅威となるものは1つもない」とヨーマンス氏は言う。「その結果、地球近傍小惑星が地球に衝突するリスクのうち95%以上は、現在では退けられている」。
Photograph by Cantalina Sky Survey