アホウドリに学ぶ未来の航空技術

2012.09.11
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翼を広げて飛ぶアホウドリ(資料写真)。両翼の長さは最大3.7メートルに達する。

Photograph by Frans Lanting, National Geographic
 地上での鈍重な動きから不名誉な和名を冠されたアホウドリ。しかし、数千キロを休まず滑空できる高い飛行能力を持ち、航空機の設計者たちから注目を集めている。 アホウドリは「ダイナミック・ソアリング」というテクニックを用いる。その要となる翼は広げると3.7メートルにもなり、一度も羽ばたかずに数千キロを滑空することが可能だ。

 アホウドリが気流に乗る仕組みについては、生物学と航空工学を組み合わせた研究で解明されつつある。次世代の革新的な航空機開発につながる可能性があるという。

 ミュンヘン工科大学のドイツ人航空宇宙工学者ヨハネス・トラウゴット(Johannes Traugott)氏らは、アホウドリの飛行パターンを細かくチャート化した。

 その結果、海面すれすれを飛ぶアホウドリは、突然進行方向を風上に変えることが判明。風を受けて約15メートルまで上昇すると、風下へと向きを変えて楽々と滑空する。高度が下がるとまた風上に方向転換する。

 両肩に備わった特殊な腱のおかげで翼を固定できるという。この構造は高性能の固定翼機と非常に似ており、研究者たちは単なる偶然では片付けられないと語る。

「航空機の滞空時間を延長する技術に応用できる。飛行時間を延ばすには、可能な限り風を利用することが重要だ」とトラウゴット氏は話す。

 海面ギリギリを飛び、突然方向を変えて急上昇する商用航空機はさすがに難しいだろう。しかし、無人飛行機にはすぐ応用できる可能性がある。絶えず空中に滞在し、無線やテレメトリ信号を受信する必要があるからだ。

◆バイオミミクリー

 進化によって培われた生物の特性を工学的に応用する考えは、「バイオミミクリー」または「バイオミメティックス」として知られている。

「Biomimicry 3.8研究所」の所長、ジャニン・ベニュス(Janine Benyus)氏は、アホウドリの真の長所は空気の圧力と風の方向の微弱変化を感知する能力にあると考えている。ちなみに、「3.8」は「3.8 billions(38億)」年前に生物が地球上に誕生し、進化を遂げてきた歴史から命名された。

「アホウドリ並みの精度を実現するには、信じられないほど高レベルのセンサーが必要になる」、と『自然と生体に学ぶバイオミミクリー』の著者でもあるベニュス氏は述べる。

◆航空機への応用

 ライト兄弟から始まる航空機の設計には、現在も鳥の飛行メカニズムが取り入れられている。

 例えば、スタンフォード大学の航空力学デザイン・グループ(Aircraft Aerodynamics and Design Group)は2009年、多くの種の鳥で見られるV字編隊飛行を分析。航空力学的に優れた特性があり、燃料消費も約15%削減できると確認した。

 年間600機以上の旅客機を製造するアメリカのボーイング社は、鳥類の進化を研究するチームを設置。自然の知恵を航空機の設計に活かす方法を模索中だ。例えば、翼の再設計やより感度の高い風センサーを開発し、より安く、速く、環境に優しい航空旅行の実現を目指しているという。

 世界最大の旅客機A380を開発したヨーロッパのエアバス社も2012年初め、動物のメカニズムを積極的に取り入れていくと発表している。

 同社によれば、効率を最大限に高めるため、今後の航空機はよりフラットになる。最も効率性に優れる鳥の骨の構造を模倣したり、翼端をワシのように少しカールさせて揚力を高める技術にも取り組んでいる。水をはじき、毒素を洗い流すハスの葉のような素材を開発して、機内の清潔さをより簡単に保てるようにする研究も進める。

 また、航空機が最小限の空気抵抗で滑空できるよう、サメ皮のように滑らかな外装用塗料も開発するという。

Photograph by Frans Lanting, National Geographic

文=Daniel Stone

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