“2つの顔”のネコ、「ビーナス」の謎

2012.08.31
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ビーナスの顔はきれいに2つの毛色に分かれている。

Photograph courtesy TODAY Show/NBC
“2つの顔”を持つ「ビーナス」は現在、世界で最も有名なネコだ。この3歳になるトータシェル(オレンジと黒などのまだら模様。白が加わると三毛ネコと呼ばれる)のメスは、フェイスブックに自分のページを持っていて、ユーチューブに投稿された動画は100万回再生され、先週はテレビ番組「トゥデイ」にも出演した。 理由は一目見ればわかる。ビーナスは、顔の半分が黒一色で目が緑、もう半分は典型的なオレンジの縞模様で青い目をしている。

 どうしてこのような顔を持つのか。カリフォルニア大学デービス校の教授で、イエネコの遺伝について研究しているレスリー・ライオンズ(Leslie Lyons)氏は、ビーナスのようなネコは見たことがないと話す。「ビーナスはきわめて、きわめて珍しい存在だ。しかし、これを説明し、理解することは不可能ではない」。

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青い棚の中で仰向けになって眠るネコ。ギリシャ、キクラデス諸島で撮影。(PHOTOGRAPH BY TUUL AND BRUNO MORANDI)
◆ビーナスはキメラ?

 多くの報道はビーナスのことを「キメラ」と紹介している。神話に登場する怪物のキメラ(キマイラ)は、さまざまな動物の部位を寄せ集めた身体を持つ。ネコのキメラとは、2つの受精卵が融合した結果、2種類の異なる遺伝子の細胞を併せ持つ個体をいう。

 ネコの間では「キメラはそれほど珍しくない」とライオンズ氏は言う。実際、オスのトータシェルのほとんどはキメラを含む染色体異常だ。特徴的なオレンジと黒のまだらの毛色は、そのオスがX染色体を1つ余分に持つことを示している。

 しかし、メスネコの場合、すでにX染色体を2つ持っているので、もう1つ余分に持たなくともトータシェルになりうるとライオンズ氏は言う。つまり、ビーナスは必ずしもキメラとは限らないということだ。

 はっきりさせるには、遺伝子検査が必要だとライオンズ氏は言う。身体の左右それぞれの側から採取した皮膚を調べれば「ドラマの『CSI:科学捜査班』のように、遺伝子の“指紋”をとることができる。キメラの場合、左右で遺伝子が異なっているはずだ」。

◆もう1つの謎は青い目

 ビーナスがキメラでないとしたら、顔が半分ずつ異なる理由として、ほかに何が考えられるだろうか。

「単なる偶然もありうる」とライオンズ氏は言う。1つの説として、顔の半分全体の細胞で黒い毛色の遺伝子がランダムに活性化し、もう半分ではオレンジの毛色の遺伝子が活性化し、発達の過程で2つの毛色が身体のちょうど中心線のところでぶつかった可能性が考えられる。

 ビーナスの2色に分かれた顔に驚いたネコ愛好家たちは、本当に驚くべき点を見落としているかもしれない。それは、ビーナスの青い目だ。ネコの目は緑か黄色が多く、青は少ない。

 青い目のネコは、シャムネコなど「身体に白い部分の多い」ネコであるのが一般的だとライオンズ氏は言う。ビーナスは胸のところに白いぶちがあるだけで、これは青い目を説明する理由として不十分だとライオンズ氏は述べている。「ビーナスの存在はちょっとした謎だ」。

Photograph courtesy TODAY Show/NBC

文=Katia Andreassi

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