古代マヤの“王子”のカップを発見

2012.08.31
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新たに発掘されたマヤ文明のカップ。若い王子が飲み物の容器として使用していたようだ。

Photograph courtesy Uxul Archaeological Project, University of Bonn
 メキシコにあるマヤ文明の都市遺跡「ウシュル(Uxul)」の発掘調査で、若い王子の墓や珍しい遺物が発見された。 ウシュルには11の建物からなる王族用の複合施設がある。エントランスの役割を担う建物の床下から小部屋へと続く道が見つかり、20~25歳の男性とみられる遺体と9つの陶器が発見された。

「あるカップには、上品な象形文字で“若い王子のカップ”と書かれていた」と発掘に参加したドイツ、ボン大学の人類学者ニコライ・グルーベ(Nikolai Grube)氏は7月30日の声明で述べている。

 別のカップには日付が記されていた。グルーベ氏と発掘チームのカイ・デルベンダール(Kai Delvendahl)氏が解読したところ、紀元711年を意味しており、王子の生存年代の手掛かりになった。

 グルーベ氏によると、マヤ文明の遺物には、持ち主に言及したメッセージが書かれている場合が多いという。「王子のカップはすべて盗掘品だった。考古学調査で発見したのは今回が初めてとなる」。

 マヤ文明は、現在のグアテマラ、ベリーズ、メキシコのユカタン半島の大部分の地域で栄えた。紀元300年前後からの古典期は最も繁栄した時代だったが、相次ぐ干ばつや政治闘争を経て紀元900年ごろに衰退してしまう。

◆王になれなかった男

 ウシュルで発見された小さな墓には、翡翠(ひすい)製の装身具がない。この王子は王位継承の候補者から外れていたようだ。

 テキサス州にあるトリニティ大学の考古学者ジェニファー・マシュー氏は、「王位継承者なら、本人似の仮面や円筒形の耳飾りなど、豪奢で精巧な翡翠の遺物が必ずある」とコメントする。「王族だが継承権はなかったと推察できる」。

 またグルーベ氏は、盗掘の可能性はないと考えている。同氏はナショナルジオグラフィック ニュースに対し、「入口が岩で塞がれており、私たちが調査するまで、完全に手つかずの状態だった」と説明している。

◆名声と権力

 王位を継承できる地位にはなかったが、彼は大きな富を手に入れたようだ。

 紀元705年ごろまで、現在のカンペチェ州にあるウシュルは、26キロほど離れたマヤの大都市カラクムルの統治下にあった。しかしその後、カラクムルが衰退して影響力が弱まると、この王子の一族がウシュルの支配者となる。

 神の化身、それがマヤ文明の支配者だ。「一族はあらゆる富を手にしたはずだ」とマシュー氏は語る。「身内の名声と権力が高まれば当然、その恩恵が彼にも及んだことだろう」。

Photograph courtesy Uxul Archaeological Project, University of Bonn

文=Rachel Kaufman

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