南米の光るゴキブリ、有毒昆虫を擬態

2012.08.31
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緑色の光を発するゴキブリの一種「ルキホルメティカ・ルケ(Lucihormetica luckae)」。

Images courtesy Peter Vrsansky, Slovak Academy of Sciences
 緑色に光るゴキブリは、われわれの家の台所にいるおなじみのゴキブリよりも退治しやすそうだ。しかし、最新研究によると、彼らが発光するように進化した理由はほかでもない、そのような自分の命を狙う相手を避けるためだという。 ゴキブリの一種「ルキホルメティカ・ルケ(Lucihormetica luckae)」が光るのは、生体発光する他の昆虫をまねるためだ。コメツキムシ科のその昆虫は、毒を持っていることを捕食者に警告するために光を発している。

 南米、エクアドルにある活火山周辺の熱帯雨林に生息する体長約2.5センチのこのゴキブリは、いくつかの点でユニークだという。1つには、進化の過程で発光能力を持つようになった生物は多いが、そのほとんどは深海に生息しており、陸生生物の生体発光は比較的珍しい。しかし、他の昆虫に擬態するために発光するという点で、このゴキブリはとりわけ珍しい存在だ。

 ほかに昆虫が生体発光する目的としては、一般的なホタルのように、交配相手を引きつけるためという要素が強い。暗闇で光ることで相手を見つけるのは時間の節約になる。その一方で、発光には捕食者に見つかりやすいというデメリットもある。

「生体発光は、進化によって発達するあらゆる特性と同じで、使い道は1つではない。相手を引きつけたり、怖がらせたり、時にはある種の隠れ蓑のような役割も果たす」と、進化生物学者で『ドクター・タチアナの男と女の生物学講座』の著者であるオリビア・ジャドソン(Olivia Judson)氏は述べる。

◆陸生生物の発光能力獲得は遅かった?

 今回の研究には、1939年に採取され、ワシントンD.C.のスミソニアン研究所国立自然史博物館に保管されていたルキホルメティカ・ルケの標本が用いられた。研究チームは最新技術を使って、発光を可能にしている生物学的メカニズムを調査分析した。

 その結果、発光するコメツキムシとルキホルメティカ・ルケは、それぞれ別の進化過程によって発光能力を獲得したにもかかわらず、両者が発する光の波長は全く同じだということが判明した。

 また、今回の研究結果は、陸生生物の生体発光が、進化のかなり遅い段階で出現したことを裏付ける可能性があるという。コメツキムシが捕食者を脅かすために発光能力を発達させたのはわずか6500万年前のことであり、4億年前から生体発光している水生生物に比べるとかなり後だ。

◆光るゴキブリは“一発屋”?

 ルキホルメティカ・ルケは、進化上の“一発屋”に終わるかもしれない。

 今回の研究で分析された標本は、非常に特殊な地域で採取されたもので、そこは先ごろ火山の噴火によって大きな被害を受けた。現在では、この種は非常に希少なため、これ以上の標本採取は絶滅につながると考えられている。われわれが家の戸棚でこの小さな光るゴキブリを発見することはまずないだろう。

 今回の研究成果は、『Naturwissenschaften』9月号に発表された。

Images courtesy Peter Vrsansky, Slovak Academy of Sciences

文=Nicholas Mott

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