腕立て伏せで仲間の注意を引くトカゲ

2008.11.24
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プエルト・リコのイエローチンドアノール(写真)の研究から、動物は混沌としたノイズの多い環境で仲間の注意を引くために大きな身ぶりや大きな音を使っているという長年の推論が裏付けられた。

 今週発表された研究によると、アノールトカゲは人目を引く大げさな腕立て伏せをして近くにいる仲間の注意を引き付けてから、縄張りや健康な体をアピールするためにより微妙な頭の上下運動を行っている。

Photograph courtesy Terry Ord
 トカゲは騒がしい環境で仲間の注意を引くために“腕立て伏せ”をしていることが、トカゲのロボットを使った新しい研究で明らかになった。 このロボットはアノールトカゲの外見とボディーランゲージを模倣して作製したもので、動物は混沌としたノイズの多い環境で仲間の注意を引くために大きな身ぶりや大きな音を使っているという長年の推論を裏付けるのに役立っている。

 プエルト・リコのアノールトカゲを対象にした研究によると、こうした“警報信号”は環境騒音に対抗するために使用されているという。

 研究によると、アノールトカゲは人目を引く大げさな腕立て伏せをして近くにいる仲間の注意を引き付けてから、縄張りや健康な体をアピールするためにより微妙な頭の上下運動を行っている。特に、暗い場所や木の枝が風に揺れるなど視覚的な“ノイズ”があって頭の上下運動がかき消されてしまう状況では、腕立て伏せをする傾向が強かった。

 研究責任者でカリフォルニア大学デービス校の進化生態学研究員テリー・オード氏は、「トカゲたちは視覚的なノイズに対抗するために行動を変化させていた」と話す。今回の研究は動物が視覚的な警報信号を使っていることを明確に提示するものだ。

 警報信号の伝達は動物界で広く行われていると考えられているが、明確に実証された例は少なく、トウヒチョウという鳥が警報音を発するほか、アマガエルやコヨーテも警報音を使うことが分かっている。

 プエルト・リコのアノールトカゲは木の幹に生息し、頭を地面の方に向けて座っている場合も多い。オスは頭の上下運動を行って近くにいるオスに自分の縄張りを知らせる。縄張りは通常、交尾が確実に成功するように、複数のメスが生息する2~3本の木に及んでいる。

 この頭の上下運動はエネルギーを多く消費するため、縄張りを主張するだけでなく、オスの健康な体を誇示するという情報も含んでいることが以前の研究で示されている。「上下運動をたくさん行って健康状態がよいことを他のオスに知らせれば、攻撃を受ける可能性は低くなる」とオード氏は言う。

 オード氏はこの行動を研究するうちに、トカゲが頭の上下運動を始める前に、ときどき腕立て伏せをすることに気が付き、警報表現のようなものだと考えた。

 その説を確かめるため、リアルなトカゲのロボットを複数制作し、腕立て伏せや頭の上下運動のほか、アノールトカゲは通常行わないデュラップ(喉袋)を広げる動きをするように設定した。デュラップとは、トカゲの喉の下に下がっているダブダブした皮膚の部分である。

 オード氏はこのロボットをプエルト・リコの森林に持ち込み、実際のトカゲがさまざまな身ぶりにどのように反応するかを観察した。300回以上の反応を分析した結果、仲間が遠くにいる場合や視覚的に注意を引きにくい状況で、警報表現として腕立て伏せを使っているという結論に達した。

 腕立て伏せだけでなくデュラップを広げる動きにも実際のトカゲが同じ反応を示したことから、腕立て伏せは単に注意を引くことが目的で、他の情報は含んでいないという仮説が裏付けられた。

 野生のアノールトカゲは腕と上体を使ってコミュニケーションを取っていることになる。「かなりのエネルギーがいることは想像がつくだろう。トカゲたちはいつもこの運動をするわけではなく、必要なときにしかしないようだ」とオード氏は述べている。

Photograph courtesy Terry Ord

文=John Roach

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