将来の五輪、クローン馬が出場可能に

2012.08.06
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世界初のクローン馬「プロメテア(Prometea)」と母親。2003年、イタリアで撮影。

Photograph by Giovanna Lazzara, AP
 7月31日、ロンドンオリンピックの総合馬術個人で、ドイツのミヒャエル・ユング(Michael Jung)選手が金メダルを獲得した。愛馬のサム(Sam)は素晴らしいパフォーマンスを見せたが、ここで新たな疑問が浮上する。ブリーダーたちはこの能力を再現するため、サムのクローンをつくるだろうか? 国際馬術連盟(FEI)は2012年6月、クローン馬とその子孫の五輪出場を容認すると発表した。今後、資金力のあるブリーダーは好きな馬のクローンを作成し、2度目の栄光を目指して挑戦できるようになる。ただし、クローン作成は容易ではなく、多額の費用も掛かる。また、親と同じ才能が備わる保証もない。

 世界初のクローン馬は、2003年に生まれたメスの「プロメテア(Prometea)」。現存するクローン馬はわずか数百頭で、大部分が競技ではなく繁殖を目的としている。作成には10万ドル(約780万円)以上の費用が掛かることもある。

 一方、体外受精に使われる種馬の精液は数万ドルで入手できる。しかし、レベルの高い競技馬のオスは、協調性を上げるために去勢されることが多い。メスの場合も、産める子どもの数は限られており、繁殖力が強くても15頭ほどだ。

 FEIで獣医部門の責任者を務めるグレイム・クック(Graeme Cooke)氏によれば、クローン馬の主な用途は遺伝物質の保存だという。オリジナルとなった馬が移動したり、競技に出場したりする一方で、クローン馬が常に子孫をつくり続けるという。

「2007年のFEI総会で、クローン作成は“公平性を欠くという点でスポーツの精神に反する可能性がある”と判断された」とクック氏は話す。

◆“不当な優位性は見られない”

 判断のカギとなったのは、クローン作成に多額の費用が掛かる事実だが、2007年と比べ費用は下がってきた。FEIは見直しを行うことを決め、複数のクローン馬を分析した結果、クローンとオリジナルは98%しか一致していないと判定された。クローンが完全な複製でないことは以前から認識されていたが、この2%という誤差が判断を覆す最終的な決め手となった。

 2%の遺伝的な差異に加え、環境やトレーニング、栄養、騎手との関係が、パフォーマンスに計り知れない影響を及ぼす。そのため、クローン馬が五輪に出場したからといって、オリジナルと全く同じパフォーマンスが実現できるわけではないと判断された。

「クローニングに不当な優位性は見られない」とクック氏は語る。つまり、チャンピオンのクローンでも、同等のパフォーマンスが保証されているわけではないのだ。

 競技によって差があるが、オリンピックには8~9歳から出場できるため、2020年の夏季大会にはクローン馬が登場する可能性がある。

◆名馬のクローンがずらりと並ぶ?

 競技の世界では、チャンピオンのクローニングは賛否両論を呼んでいる。

「(米競馬史上の名馬)“セクレタリアト(Secretariat)”のクローンができても、育て上げることは容易ではない」。アメリカ、ケンタッキー州レキシントンの牧場スリー・チムニーズ(Three Chimneys)でサラブレッドを飼育するダン・ローゼンバーグ(Dan Rosenberg)氏は、Webサイト「Yahoo! Sports」の取材に対しコメントしている。

「クローニングは競技の面白さや魅力を奪う行為だ。20頭の出走馬すべてがシアトルスルー(Seattle Slew)のクローンだったら、レースを見たり、賭けたりして楽しめるだろうか? ゴルフ大会の選手が全員タイガー・ウッズだったら? 私は面白いと思わない」。

 なお、FEIでは、クローニングはあくまで繁殖の手法であると強調している。特定の遺伝子を選別し、スーパーホースを生み出す行為は決して認めないという。

Photograph by Giovanna Lazzara, AP

文=Kastalia Medrano

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