頑丈な歯の齧歯類化石を発見、チリ

2012.08.03
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1300万年前に生息していた太古の齧歯類「Mesoprocta hypsodus」の復元図。今回チリで発見された「Andemys termasi」の近縁種にあたる。

Illustration courtesy V. Simeonovski and D.A. Croft
 南アメリカで新種の齧歯類(げっしるい)の化石が2種類発見され、進化上のホットスポットとしての重要性が改めて示された。どちらも頑丈な歯を備えており、史上最古の草原地帯に生息していた可能性があるという。 学名「Andemys termasi」、“アンデスのネズミ(mouse of the Andes)”というニックネームが付けられた種はネズミに似ており、中南米の熱帯雨林に生息する齧歯類アグーチの最古の近縁種と考えられている。もう一種の学名は「Eoviscaccia frassinettii」。南米の山岳地帯や草原地帯に生息するチンチラやビスカッチャの最古の近縁種にあたり、チンチラと形態がよく似ていた可能性が高いという。

 3200万年前に生息していた種で、発見場所はチリ中央部のチンギリリカ(Tinguiririca)川渓谷。かつては近くに活火山が連なり、化石の発掘場所としては意外である。

 数十年間にわたり、火山岩の中から化石が発見されることはないと考えられてきた。熱が高すぎて通常は化石が残らないためである。しかし、なぜかこの渓谷では、古代の噴火活動によって化石の宝庫が地中に埋まり保存されていたのである。

「起伏の激しい地形で、火山活動によって堆積した岩が3000~4000万年という長期にわたって保存された」と、ニューヨークにあるアメリカ自然史博物館のキュレーターで、発掘の共同研究者ジョン・フリン(John Flynn)氏は話す。「南米における哺乳類の進化の記録としては、最高レベルの発見だ」。

◆生息場所は最古の草原地帯?

 化石の歯の分析結果から、定説より1500万年も早く、地球上には既に広大な草原地帯が存在していた可能性が明らかになった。分厚いエナメル質の歯冠が歯茎の下まで伸びた奥歯があり、ザラザラした草のようなエサを食べていたことが伺えるという。

 このような「長冠歯」は、ウマやヤギ、ウシなどの現存する草食性哺乳類にも見られる特徴であり、化石の主が草の多い環境に生息していた証左になる可能性が高い。

「一部の研究では、当時のこの地域に広大な草原が存在していたという証拠は示されていない。しかし現在の環境を見ると、長冠歯を発達させた種の数と草原地帯の発生との間には、極めて密接な相関関係がある。結論は慎重に出すつもりだが、今回の長冠歯で史上最古の草原地帯の存在を証明できると思う」とフリン氏は述べる。

 ウルグアイの国立自然史博物館(National Museum of Natural History)に所属するエンリケ・ボステルマン(Enrique Bostelmann)氏も、「この齧歯類は、太古に草原地帯が存在していたことを間接的に示す重要な証拠になり得る」と同意している。

「しかし、この適応形態は他の原因からでも生じる可能性があり、注意が必要だ。例えば、動物がエナメル質の歯冠を発達させるのは、誤って砂の混ざった土を口に入れたときに歯が摩耗してしまうのを防ぐためとする研究もある。また、頻繁な火山活動によって荒れた土壌が、長冠歯の発達の引き金となった可能性もある。先史時代に草原地帯が存在していたと証明するには、花粉化石などの植物性物質を分析し、より直接的な証拠を得る必要がある」。

◆齧歯類の爆発的進化

「現在の南米には非常に豊かな生物相が存在している」とフリン氏は話す。「約4000万年前以降に別の地域から移住してきた種が南米で進化し、環境、気候、地形の変化も作用して多数の種が生まれた」。

 2008年にウルグアイ南西部で超大型齧歯類の化石発見に関わったボステルマン氏は、「最初に南米に移住してきた齧歯類は、ジャングルや森林に適応した樹上生活者だったようだ」と語る。

「今回の化石は、樹上生活者が環境に適応し始め、やがて超大型の齧歯類に進化していった過程を示している」。

 研究結果は「American Museum Novitates」誌に7月20日付けで掲載された。

Illustration courtesy V. Simeonovski and D.A. Croft

文=Brian Handwerk

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