日焼けの仕組みを科学的に解明

2012.07.12
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皮膚に太陽光が当たると細胞内にあるRNAの一種が分解される。それが検知されることで炎症反応が起こるという。

Photograph by Jason Edwards, National Geographic
 肌を長時間日光にさらすと、皮膚が赤くなりヒリヒリと痛みを感じるのはなぜだろうか? 日焼けの症状が現れるメカニズムが、最新研究によって初めて解明されたという。 研究を率いたカリフォルニア大学サンディエゴ校教授(皮膚科学)のリチャード・ギャロ(Richard L. Gallo)氏は次のように話す。「日焼けは日常的に経験する、ごくありふれた症状だ。しかし、人体が太陽光エネルギーを有害だと認識する仕組みについては、意外にもほとんど知られていなかった」。

 研究グループが突き止めたのは、皮膚が“警告を発する”化学的な仕組みである。太陽光に含まれる紫外線によって損傷を受け死んだ細胞(死細胞)の内部では、RNA(リボ核酸)の一種が分解される。

 それを検知した隣接する細胞内の受容体分子が、死細胞周辺の健康な皮膚に炎症を起こすように信号を送る。これが、日焼けの症状が現れるメカニズムである。

 細胞内のRNAには主に、DNAと共に二重螺旋構造を形成しながら遺伝情報を伝達する役割がある。だが、日焼けを引き起こすRNAは「非コードRNA」という種類で、遺伝情報の伝達ではなく遺伝子の働きを制御する役割を担っている。

◆日焼けを引き起こす分子の“二重の役割”

 ギャロ氏の研究グループは日焼けの原因を突き止めるため、ヒトから採取した皮膚細胞に紫外線を照射して損傷を与えた後、それらの死細胞を正常細胞の培地に加えた。1回あたりの照射量は、肌を15~30分ほど直射日光にさらした場合に相当する。肌が赤くなる症状に十分な量である。

 この実験から、通常はウイルスに由来する外来性のRNAを検出する受容体が、死細胞内の分解されたRNAを認識して炎症反応を誘発するという意外な結果が導かれた。ギャロ氏は、「この受容体には二重の役割があるようだ」と説明する。

 研究グループは仮説をより詳しく検証するため、RNAを検出する受容体を持たない遺伝子組み換えマウスに紫外線を照射する実験を行った。その結果、日焼けの症状はほとんど見られず、この受容体が皮膚の炎症を引き起こす原因だと示された。

◆炎症は生体にとって有益な反応

 ただしギャロ氏によれば、炎症は生体にとって有益な反応なのだという。例えば、太陽光線によって損傷した細胞を除去し、皮膚の再生を促す役割がある。

 また、遺伝子が損傷した細胞を取り除くことで、ガンの発生を未然に防ぐ役割もあると見られている。

 さらには、炎症がもたらす不快感によって、太陽光を浴び過ぎるのは体に良くないと知ることもできる。

 今回の成果は、新たな科学的知見として興味深いだけでなく、実用面でも期待が大きい。ギャロ氏によれば、日焼けの仕組みを解明すれば炎症抑制剤の開発につながる可能性がある。日光に対して過敏に反応する全身性エリテマトーデスなどの自己免疫疾患に苦しむ人々にとって、炎症抑制剤は極めて有効な治療薬になりうるという。

 研究の詳細は、「Nature Medicine」誌オンライン版に7月8日付けで発表されている。

Photograph by Jason Edwards, National Geographic

文=Christine Dell'Amore

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