ライオンVS.カバ、異例の対決

2012.07.11
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若いカバを襲う2頭のオスライオン。専門家によると、非常に珍しい対決という。南アフリカ共和国のサビ・サンド動物保護区で2006年撮影。

Photograph by Andrew Schoeman, National News/Zuma Press
 2006年、南アフリカ共和国のサビ・サンド(Sabi Sand)動物保護区を訪れていた写真家アンドリュー・スクーマン(Andrew Schoeman)氏は、ある朝、苦しげな鳴き声で目を覚ましたという。確認するため外に出ると、カバがライオンに襲われ、水辺に追い込まれていたのだ。「カバは水たまりに入り、隙あらば逃げようとしたが、その度にライオンが襲いかかる。その場に留まるしかなかった」とスクーマン氏は振り返る。

◆希少な事例

 野生ネコ科動物の保護団体「パンセラ(Panthera)」の代表を務めるルーク・ハンター(Luke Hunter)氏は、「ライオンはどんな獲物でも殺せる。アフリカのある地域では、大きなプライド(群れ)でゾウを倒すことが知られている。しかし、カバに襲いかかる姿は非常に珍しい」と話す。

「ライオンはヌーやシマウマなど、仕留めやすい獲物を狙うのが普通だ」。パンセラは、ナショナル ジオグラフィック協会のビッグキャット・イニシアチブと提携している。

 ハンター氏によると、クルーガー国立公園に隣接するサビ・サンド動物保護区で1988年から2000年に実施された研究では、大型肉食動物に殺された動物4000体以上が調査された。しかし、ライオンが獲物にしたカバは1体だけだったという。

 ライオンがカバを襲うことがいかに珍しいかは、1933年から1966年にかけてクルーガー地区で行われた研究でも示されている。その調査で確認された肉食動物による他の動物の捕殺4万6181例の中で、ライオンがカバを殺したのは6例のみであり、うち4例はひどい干ばつの時期でカバはやせ細っていたという。

 ケニアにある非営利のレワ野生動物保護管理公園でCEOを務めるマイク・ワトソン(Mike Watson)氏も、「ライオンとカバの対決は普通ではない」と同意する。

「ライオンは自分が傷つくのを嫌がる。カバやゾウ、大人のキリンなど、大型哺乳類に戦いを挑むとケガをする可能性が高く、あえて狙いはしない。ターゲットはもっと手数がかからない動物だ」。

◆オスライオンの役割

 ミネソタ大学でライオンを研究する生物学者クレイグ・パッカー(Craig Packer)氏は今回の事例について、「オスライオンは怠け者で、メスにすべての仕事を押しつけるという固定観念を覆す写真だ」と話す。プライド(群れ)のメスは、基本的に小さな獲物を捕まえる。「アフリカスイギュウ、キリン、カバなどの大型動物はオスの担当だ」。

 パンセラのハンター氏も、「オスライオンは非常に有能なハンターだ。写真のように、相手の出方をうかがう戦法を得意としている」と話す。「プライドの乗っ取りを狙う放浪オスとも戦う必要がある。オスの生活は決して楽ではない」。

◆ライオンの戦術

 水の中に逃げ込んだカバに対して2頭のライオンは、気付かれないよう陸上で身を隠していた。その後、カバが水から出て50メートルほど離れるまで待ち、追撃するという高等戦術を用いた。

 レワ野生動物保護管理公園のワトソン氏は次のように話す。「ライオンは戦術の天才だ。非常に独創的な方法を編み出して危険な獲物を襲う。レワに隣接するボラナ野生保護区では、18頭のライオンが巧みな連携で大人のキリンを倒している」。

 写真家のスクーマン氏が対峙する両者の観察を始めてから数時間。途中でもう1頭加わって3頭となったライオンは、カバを水中で仰向けにひっくり返すことに成功し、溺死させたという。

Photograph by Andrew Schoeman, National News/Zuma Press
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