アンチエイジングの秘密に迫る新研究

2012.07.11
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ロイヤルゼリーの蓄えられた巣の小部屋をのぞき込むミツバチ。ロイヤルゼリーは、若いミツバチが幼虫のために分泌する。

Photograph by Eric Tourneret, Visuals Unlimited
 最近発表された動物に関する2つの発見は、人間のより長くより幸せな人生のために、いつの日か役立つかもしれない。1つは、年をとったミツバチの能力が若い頃の状態に回復することを明らかにした研究。もう1つは、イースター島で見つかった薬剤により実験用マウスの記憶能力が改善されたという研究だ。 ミツバチの研究は、集団における若いハチと年とったハチの能力の違いを調査する内容で、5月に「Experimental Gerontology」誌に掲載された。

 研究では、まず若い保育士役のハチを巣から取り除いた。すると6週間の寿命を間近に控え、“加齢に伴う学習障害”を示していた年寄りのハチたちが、幼虫のためにロイヤルゼリーを分泌するなど、若い頃に果たしていた子守役を引き受ける働きを見せた。

 研究を率いたアリゾナ州立大学生命科学学部のニコラス・ベイカー(Nicholas Baker)氏は研究報告のなかで、年寄りのハチの多くが「若い子守役のハチと同じ行動を示した。それは私たちと似た行動で、彼らは知性を取り戻した。一体これは何が起きたのか」と述べている。

 しかし年齢を重ねたハチのすべてが、優秀な子守役に戻ったわけではなかった。

 能力を取り戻したハチと回復が不十分なハチを分析した結果、顕著な回復を示したハチの脳内には、高濃度のタンパク質グルタミン酸が見つかった。人間の場合、適度な量のグルタミン酸は記憶や学習の効果を高める。ただし、多すぎれば高度な認識能力に障害を与えることもある。

 研究では、グルタミン酸によってハチの脳細胞の再生が可能になり、再び引き受けた子守役の務めを終えるまで、当初の寿命よりも長生きすると結論づけている。

 これはハチにとってだけでなく、おそらくは人間にとっても朗報だろう。「基本的には年齢を巻き戻すことはできない。しかし今回の研究が示すのは、社会的な繋がりを持ち、新たな活動に就いて新しい脳細胞間の結合ができれば、老化の弊害を遅らせることができるということだ」とベイカー氏は語る。

 この研究は、さらに別の利得をもたらす可能性もある。ミツバチの脳内タンパクの変化を研究することで、老化による脳機能の減退を食い止める医薬品の開発に繋がると期待されている。

 ただしベイカー氏によれば、そのような薬が完成するにはあと30年かかるかもしれないという。そして同氏は高齢者に対し、座して新薬を待つよりも、若さを保つために新たな挑戦に取り組むよう勧めている。

◆マウスの老化防止薬は人間にも有効か?

 テキサス大学健康科学センターの研究者らは、年老いたマウスの記憶減退を抑制する薬を発見した。この薬は抗うつ効果を示し、実質的には寿命を引き延ばす。

 この研究は「Neuroscience」誌に6月28日付けで掲載されたもので、ラパマイシンという薬の有効性を検証する内容だった。ラパマイシンは1970年代にイースター島の土壌から見つかった薬品で、名前はイースター島のポリネシア語名ラパ・ヌイに由来する。ラパマイシンは長年、臓器移植の確実性を高める免疫抑制剤として使われてきた。老化防止の面で検証が行われるようになったのはつい最近のことだ。

 そして今回の研究では、ラパマイシンを投与したマウスに、記憶能力の強化や不安神経症の抑制および抑うつ、さらには延命の効果が現れた。

 最初はアルツハイマー病を罹患したマウスのグループと、その対照グループにラパマイシンを与える計画だった。しかし研究の共著者ベロニカ・ガルバン(Veronica Galvan)氏によれば、程なくして年老いたマウスが活力を取り戻しただけでなく、健康体のマウスも実験前より活気を示していることに気付いたという。

 研究者らは、細胞が成長するのか、寿命の長期化に繋がる「維持モード」に入るのかを決めるタンパク質をラパマイシンが抑制すると説明している。

 次の段階は人体による臨床試験だ。ガルバン氏は今後5年をかけて臨床試験に臨みたいとしている。

Photograph by Eric Tourneret, Visuals Unlimited

文=Kastalia Medrano

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