新たに特定されたブラックホール(円内)は星団の中に位置している。

Image courtesy S. Farrell, U. Sydney/U. Leicester/ESA/NASA
 3年前に発見され、中間質量ブラックホールの“候補”とされてきた天体「HLX-1」が、新たな研究でようやく“本物”であると確認された。 研究チームの発表によると、NASAのチャンドラX線観測衛星および探査衛星スウィフトを用いた3年近い観測の結果、地球から約3億光年の距離にあるHLX-1が、新しいタイプである中間質量ブラックホールの初の観測例であることが確認された。

 最近まで、ブラックホールには2種類の大きさしかないというのが定説だった。1つは太陽の数倍の質量を持つ恒星質量クラスの小型ブラックホール、もう1つは太陽の数百万倍以上の質量を持ち、我々の太陽系全体を飲み込めるサイズの超大質量ブラックホールだ。

 恒星を引き裂き飲み込むことで知られる超大質量ブラックホールは、太陽系が位置する天の川銀河を含む、多くの銀河の中心部分にのみ存在する。

 今回確認されたブラックホールは、この2つのタイプの中間に位置し、その質量は太陽の約9万倍とされている。

◆中間質量ブラックホールは初期宇宙の名残?

 今回の調査にあたった国際的な天文学者チームは2009年、“ほぼ偶然”にHLX-1を発見した。大量のX線と電波フレアを発している天体が見つかったが、その発生源は渦巻銀河の中心部分ではなく、1万2000光年ほど離れた場所だった。

 研究を主導したフランス宇宙線研究センター(CESR)のナタリー・ウェブ(Natalie Webb)氏は次のように説明している。「2009年から2010年の観測で、HLX-1は恒星質量ブラックホールと似た挙動を示すことがわかった。そこで、HLX-1から発せられる電波フレアを観測可能な時期をはじき出し、2011年8月と9月にさらなる観測を行ったところ、確証が得られた」。

 このような中間質量ブラックホールの起源は、無数の恒星が互いの引力で引き寄せあって密集した球状星団の中心部にあるのかもしれない。あるいは、中間質量ブラックホールはごく初期の恒星によって形成された、太古の宇宙の直接的な痕跡なのかもしれない。

 ウェブ氏はこう話す。「宇宙の草創期には、非常に大きな質量、例えば太陽の1万倍程度の恒星が存在していた可能性がある。こうした恒星の寿命はとても短く、その一生を終えて中間質量ブラックホールとなったのではないか」。

◆超巨大ブラックホール形成過程の手がかりに

 また、中間質量ブラックホールが存在すること自体が、超大質量ブラックホールの形成過程を解き明かす鍵になるかもしれない。中間質量ブラックホールは、超大質量タイプの原型なのではないかとウェブ氏は考えている。

 例えば、1つの中間質量ブラックホールが太陽100万個分の質量を飲み込めば、超大質量ブラックホールの規模まで成長できる。また、複数の中間質量ブラックホールが「初期宇宙の中で融合し、現在見られるような超大質量ブラックホールを形成した」のかもしれない。

 いずれにせよ、中間質量ブラックホールが宇宙全体でどの程度一般的なのかを見定めるにはさらなる研究が必要だ。「今のところ有効な実例がひとつだけ(HLX-1)なので、観測で確認することは難しい」とウェブ氏は言う。「しかし、各銀河に数百個程度は存在するだろうと考える研究者もいる」。

 今回の研究は、「Science」誌のオンライン版に7月5日付で掲載された。

Image courtesy S. Farrell, U. Sydney/U. Leicester/ESA/NASA

文=Andrew Fazekas