民間初の小惑星捜索ミッション発表

2012.06.29
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民間の宇宙望遠鏡「センティネル」が予定の太陽周回軌道を回っている図。

Illustration courtesy B612 Foundation
 民間資金による初の深宇宙ミッションとして、小惑星捜索用の宇宙望遠鏡を2017年か2018年に打ち上げる計画が米国時間6月28日に発表された。 この大がかりな計画を進めているのは、B612財団(B612 Foundation)という非営利団体だ。財団の名前は、アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリの小説『星の王子さま』の主人公の故郷である小惑星「B612」にちなむ。

 元宇宙飛行士やNASAのベテラン天文学者が率いる同財団はこの日、赤外線望遠鏡「センティネル」(Sentinel)の構築、打ち上げに向けた資金調達に乗り出した。この望遠鏡を使って、太陽系内の“小惑星マップ”の作成を目指す。ミッション全体の予想費用は明らかにしていないが、望遠鏡だけで数億ドルはかかる見込みだ。

 ミッションの目標は、地球に衝突する可能性のあるものを含む地球近傍小惑星の現在および今後の軌道を明らかにすることだ。

「われわれはこれまでに1万個ほど(の地球近傍小惑星)を発見、追跡しており、特に大型で危険性の高いものはほとんど突き止めているが、それでもまだ多くの未発見領域が残っている」と元NASAの宇宙飛行士・天体物理学者で、現在はB612財団の会長兼CEOを務めるエド・ルー(Ed Lu)氏は述べる。

 財団が特に懸念しているのは、比較的小型で発見しづらい小惑星だ。これらは地球全体を滅ぼすことはなくとも、衝突すれば複数の都市を消し去る威力は十分にある。

 ルー氏によると、例えば、謎の「ツングースカ事件」を引き起こしたとされる小惑星と同等のサイズの地球近傍小惑星は推定で50万個ほど存在するという。今から100年以上前に起きたこの事件では、シベリア辺境の広大な森林がなぎ倒された。

 地球近傍に存在する小惑星の地図作成と追跡は、地球への壊滅的被害を防ぐだけでなく、将来の惑星間ミッションにも役立つ可能性がある。宇宙船が障害物を避けて太陽系内を移動できるようになるからだ。

「NASAはすでに取り組みを開始しているが、地球軌道を横切る全領域の98~99%はまだ地図化されていない。そこで、政府に説得を試みるより、自分たちでやろうということで始まったのが、われわれの計画だ」とルー氏は話す。

◆太陽系内の危険物を地図化

 アメリカ政府は現在、NASAの地球近傍天体(NEO)プログラムを通じて、地球に衝突する危険のある小惑星や彗星の捜索と追跡を行っている。

 同プログラムがこれまでに発見した地球近傍天体は、6月21日現在で9054個にのぼる。そのうち1317個は地球に衝突する可能性のある小惑星に分類され、また、849個は大きさが直径1キロ超のもので、実際に衝突すれば地球に壊滅的な被害をもたらす。

 NASAの諮問委員会に属する「惑星防衛タスクフォース」(Task Force on Planetary Defense)は、この取り組みに加えて、より小型の地球近傍小惑星も発見できるよう、金星に近い軌道上に赤外線宇宙望遠鏡を設置することを勧告している。

 ここで重要なのは、地球と太陽の間に望遠鏡を設置するという点だ。その位置であれば、まぶしい太陽の光に常に背を向けて地球軌道を観測することが可能になる。また、赤外線を使って観測する点も重要だ。可視光では、小型で暗い小惑星を見落とすおそれがある。しかし、小惑星は太陽からの熱を吸収しているため、赤外線で見ると、冷たい宇宙空間に浮かぶ小惑星はよく目立つ。

◆衝突リスク、実際のところは?

 計画通りにいけば、センティネル望遠鏡は地球より48~274キロ太陽に近い軌道上を回ることになる。そして26日ごとに観測を行って移動している天体を見つけ出し、地球に分析用データを送信する。

 センティネルは、観測開始から5年半以内に50万個の地球近傍小惑星を発見・追跡する見込みで、そのうち90%が直径140メートル超になるはずだという。

「これは楽しみだ」とアリゾナ大学の天文学者エド・ビショア(Ed Beshore)氏は話す。「適切に設計された宇宙望遠鏡を使えば、地球に潜在的な危険をもたらす地球近傍天体のほとんどを速やかに発見できることは間違いない」。

 地球近傍天体プログラム「カタリナ・スカイサーベイ」の主席研究者を務めていた経験を持つビショア氏によると、地上からの調査ならはるかに安いコストで同じことができるが、調査完了までにおそらく40年以上はかかるという。

 問題は、この余計にかかる歳月の間に、重大な脅威が発生する可能性があるかどうかという点だ。ビショア氏は、統計的にその可能性はまずないとみている。

「脅威という観点では、大型の小惑星が地球に衝突する可能性は極めて低い。しかし、万が一それが起こった場合には地球が全滅するという被害の大きさを考慮すると、この問題に関する総合的リスクは大きい」とビショア氏は述べる。

「科学者の立場から言うと、これは科学ミッションとして公的資金を投じるには不十分な案件であり、地上でできることをミッションにすべきではないというのが私の考えだ。しかし、民間の投資家がこれを緊急性が高く、速やかに解決すべき問題だと判断するのなら、解決の方法は(望遠鏡打ち上げという)宇宙ミッションしかない」。

Illustration courtesy B612 Foundation

文=Kastalia Medrano

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