鳥の登場が昆虫の巨大化を阻止?

2012.06.06
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約3億年前に存在した翼幅76センチほどのメガネウラ(想像図)。

Illustration by Walter Myers, Stocktrek Images/Alamy
 もし鳥類が地球に生まれていなければ、空にはいまも巨大な昆虫が飛び交っていたかもしれない。 現在、昆虫は地球上で最も小さな生き物の一つだ。しかし、約3億年前、巨大昆虫はごくありふれた存在だった。例えば、トンボに似たメガネウラは羽を広げたときの幅が約70センチ。カリフォルニア大学サンタクルーズ校の古生物学者マシュー・クラパム(Matthew Clapham)氏は、「カラスとほとんど変わらない」と説明する。翼幅が最も大きい現生の昆虫はチョウやガだが、30センチ程度しかない。

 先史時代の昆虫が異常に成長した原因は、大気に30%以上含まれていた酸素にあるという。現在の21%と比べると、息を吸い込むごとにより多くのエネルギーが得られ、巨大な体でも動かせたのだ。

 クラパム氏らは3億2000年前以降の昆虫化石を1万500点以上調べ、翼幅のデータベースを作成した。

「酸素濃度の上昇とともに、昆虫は大きくなった。そして、酸素濃度が下がると、小型化していた」と同氏は話す。

 ところが、約1億5000万年前のジュラ紀に状況が変わる。恐竜とともに鳥が登場すると、羽を持つ昆虫の巨大化が止まった。酸素濃度が上昇したにもかかわらずだ。「酸素は昆虫の大きさの重要な制限要因と考えられる」とクラパム氏は述べる。「しかし、鳥が進化すると、昆虫のサイズは鳥によって制限されるようになった」。

◆鳥による捕食

 なぜ巨大昆虫は鳥に敗れたのか? クラパム氏は、「飛行する生物の運動能力はサイズに左右される。小さい方がはるかに小回りがきく」と説明する。

 つまり、大きな昆虫は標的にされると逃げ切れなかったようだ。あるいは、鳥が巨大昆虫のエサを消費してしまった可能性もあるという。

「トンボは捕食性で、自分より小さな昆虫をエサにする」とクラパム氏。ジュラ紀には、「鳥と大きなトンボが同じエサを奪い合っていた可能性がある」。

 奇妙なことに、翼竜が昆虫のサイズに影響を及ぼした証拠は見つからなかった。翼竜は鳥より前に登場した空飛ぶ爬虫類で、昆虫を捕食していたと考えられている。

「翼竜が進化した後の昆虫の大きさは、酸素濃度から予想される範囲内にほぼ収まっていた」とクラパム氏は話す。「翼竜は鳥と比べ、飛行中に素早く動けなかったことが原因ではないか」。

 もし鳥が存在しなければ、現在の昆虫ははるかに大きかった可能性が高い。現在の酸素濃度に基づくと、「最大の昆虫種は3倍巨大化した」とクラパム氏は予想する。「すべての昆虫が今より3倍大きくなるわけではないが、成長の限界が上がり、大型化しただろう」。

 研究の詳細は「Proceedings of the National Academy of Sciences」誌に6月4日付けで掲載されている。

Illustration by Walter Myers, Stocktrek Images/Alamy

文=Ker Than

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