恐竜のゲップが地球を温暖化した?

2012.05.08
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新たな餌場を求めて移動する竜脚類の群れ(想像図)。

Illustration from Mark Hallett Paleoart/Photo Researchers
 恐竜の体内から発生するガスが、古代の地球の温暖化を進めていたかもしれないという研究が発表された。 ディプロドクスやアパトサウルスなど、竜脚類と呼ばれる1億5000万年前に生息していた巨大な草食恐竜は、反芻(はんすう)を行っていた。つまり、消化のプロセスで大量のメタンガスを発生させていたということだ。メタンは二酸化炭素以上に熱を捉える温室効果が高い。

 世界気象機関(WMO)によると、ウシ、ヤギ、ヒツジ、キリンなど反芻動物が年間に排出するメタンの量は、現在5000万~1億トンに達し、地球温暖化に影響を及ぼしているという。これは、年間に大気中に排出されるメタンの総量5億~6億トンの中でもかなりの部分を占める。総排出量の大半は人間の活動によるものだ。

 反芻動物の巨大な前胃(第1~第3胃)には、硬い植物を分解する微生物が大量に共生している。この分解過程の主な副産物がメタンだ。体内で発生したメタンは、どこかに出て行かなければならない。

 今回発表された研究論文の共著者で、イギリスにあるリバプール・ジョン・ムーア大学の生態学者デイブ・ウィルキンソン(Dave Wilkinson)氏は、「メタンは動物の前後どちらかの端から排出される。例えばウシなら主に前の端からだ」と話す。

 しかし、知られている限りで最大級の恐竜で、体重約20トンにも達する竜脚類がどのようにメタンを排出していたか、「はっきりしたことはわからない」とウィルキンソン氏は言う。

◆竜脚類は大量のメタンを排出していた

 竜脚類が排出したメタンの量を推定するため、研究チームは、植生のある土地1平方キロ当たり約10頭の竜脚類が生息していたと仮定した。

 さらに研究チームは、現生の反芻動物の分析から、1頭の竜脚類は1日に約1.9キロのメタンを排出していたと推測した。米国のウシ1頭が1日に排出するメタンは0.2~0.3キロと考えられている。

 竜脚類が生きていた時代に植物に覆われていた土地を地球全体で7500万平方キロ(現在の陸地面積の2分の1程度)とすると、竜脚類全体が1年間に排出したメタンの総量は、なんと5億2000万トンに達する。

「竜脚類が排出するメタンの総量はどの程度だったのだろうという疑問が最初に思い浮かんだときには、最終的に推定した数値よりもかなり少なく見込んでいた」とウィルキンソン氏は話す。

「確かにわれわれの推定には多くの不確定な要素がある。だが、この推定からすると、竜脚類が排出していたメタンの総量は、自然なものも人為的なものも含め現在の世界で発生するメタン総量にほぼ匹敵していた可能性がある」。

◆限られた推測の根拠

 ウィルキンソン氏らは、分析に際して多くの面で限られた知識をもとに推測を行ったことを認めている。動物の消化を専門とするチューリッヒ大学の生理学者マルクス・クラウス(Marcus Clauss)氏も、その点に疑問を呈する。クラウス氏は今回の研究に参加していない。

 例えば研究チームは体重に基づいてメタンの排出量を計算しているが、クラウス氏は、その根拠は現代の爬虫類と哺乳類における測定値だと指摘する。現生動物の中で最も恐竜に近い鳥類の測定値ではない。

 残念ながら、草食の鳥がどのくらいのメタンを排出するかは今のところ知られていない。「草食の鳥が排出するメタンが、同等の大きさの草食動物より少ないとわかったなら、計算をすべてやりなおす必要があるだろう」とクラウス氏は話す。

 計算結果とは関係なく、発見されている化石から、竜脚類が生きていた時代は現代よりもかなり温暖だったことははっきりしている。「超温室状態と言われることもある」とウィルキンソン氏は言う。

 恐竜のメタン排出と温暖化の関係をはっきりさせるために、気候変動をモデル化する専門家や古生物学者は、竜脚類が繁栄した時代にメタン量が増加した痕跡を探したらどうかとクラウス氏は提案する。

 ウィルキンソン氏は、結局のところ、当時も現代も「生命は、自らの生息環境の物理的・化学的特徴を決定する上で大きな役割を果たし得る」ということだと付け加えた。

 恐竜が排出するメタンについての論文は、「Current Biology」誌の5月8日号に掲載された。

Illustration from Mark Hallett Paleoart/Photo Researchers

文=Charles Choi

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