発光するサメの謎、仕組みを解明

2012.04.30
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ツラナガコビトザメ(上)と発光するカラスザメ科の1種。

Photographs courtesy J. Mallefet, FNRS/UCL
 矛盾したことのように聞こえるかもしれないが、ツラナガコビトザメは暗い海の中で、発光することで身を隠しているという、新たな研究結果が発表された。 この研究は、そもそもサメがどのようにして発光するようになったのかという、サメ類の進化の大きな謎に光を投げかけるものだ。

 研究論文の主著者でベルギーのルーバン・カトリック大学の生物学者ジュリアン・クレ(Julien Claes)氏は、電子メールでの取材に対し、「現在知られているサメの種の10%以上は発光する。だが、サメの生物学的研究において、発光はいまだに最大の謎の1つだ」と述べている。

 ツラナガコビトザメは成魚でも体長15センチにしかならない。世界最小のサメ類の1種だ。深度のある外洋に生息する。この種の青みがかった腹が発光するのは、カモフラージュのためだと研究論文は指摘する。

 論文の共著者で、同じくルーバン・カトリック大学の生物学者であるジェローム・マレフェ(Jerome Mallefet)氏は、「深い海で泳いでいる生物を下から見ると、海面からの青みを帯びた光を背景に、影となって見える。生物のお腹が海面と同じような青みがかった光を発すれば、その影は見えなくなる」と説明する。

◆サメ同士のコミュニケーション

 これまでの研究から、発光するカラスザメの1種ベルベットベリー・ランタンシャーク(英名:velvet belly lantern shark、学名:Etmopterus spinax)では、3種類のホルモン――メラトニン、プロラクチン、アルファMSH――が発光をコントロールすることがわかっている。

 体長60センチほどのこのカラスザメは、発光し続けるだけでなく、皮膚の斑点を短時間だけ光らせることができる。マレフェ氏によると、例えば「オスとメスは、暗い中でも互いに生殖器を見るだけで相手を識別できる」という。短時間だけ「オスのクラスパー(1対の交接器)が発光する」。

 研究チームは、カラスザメとツラナガコビトザメが同じ方法で発光を制御しているかどうかを調べるため、カラスザメで働いている3種類のホルモンと、深海の硬骨魚類の生物発光をコントロールしている神経伝達物質を、ツラナガコビトザメの皮膚標本に注入した。

 その結果、カラスザメでもツラナガコビトザメでも、メラトニンは持続的な発光を導き、アルファMSHは発光を止める働きをすることがわかった。また、硬骨魚類の神経伝達物質はどちらの種でも何の影響も及ぼさなかった。しかし、研究を率いたクレ氏によると、カラスザメで短時間の発光を促すプロラクチンは、ツラナガコビトザメでは光を抑えた。このことから、ツラナガコビトザメは短い発光はできず、カモフラージュのためだけに発光していると、研究チームは結論づけた。

◆生物発光の起源は1つ

 サメの中で発光することが知られているのはカラスザメ科とツラナガコビトザメ科の2つの科だけだ。それぞれの科に属する2つの種が発光の制御に同じホルモンを使っているということから、すべてのサメの発光は、1つの進化から生まれたことが示唆されると、論文は指摘する。

 しかし、ツラナガコビトザメのシステムのほうが単純であるため、この小さい種のほうが最初に発光した祖先のサメに近いと考えられるという。カラスザメは、もっと後で進化した種を祖先とするはずだ。その種は、深く暗い海に暮らすようになり、発光の複雑なコントロール法を進化させた。

「カラスザメ科のサメは、身を隠すためだけでなく、コミュニケーションを取るために発光を利用した」とマレフェ氏は話す。

 サメの発光制御の仕組みは明らかになったが、サメの体内に存在するどの物質が発光しているのかはいまだに不明だ。研究チームは目下この点の解明に取り組んでいる。発光する動物の多くは細菌の力で光っているが、今のところサメの発光器官はそうではないように思えると、マレフェ氏は話す。また、ほかの生物の発光に見られる化学物質でもないという。

「これは謎だ。(動物界でも)これまでまったく知られていなかったものかもしれない」とマレフェ氏は話している。

 発光するサメについての研究は、「Journal of Experimental Biologists」誌の5月15日号に掲載される予定だ。

Photographs courtesy J. Mallefet, FNRS/UCL

文=Helen Scales

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