最大の羽毛恐竜、中国で化石発見

2012.04.03
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ユウティラヌス・フアリの群れとベイピアオサウルス(左下の2頭)の想像図。

Illustration by Brian Choo via Nature
 ティラノサウルス・レックスの遠戚にあたる巨大な羽毛恐竜が発見された。実在した羽毛のある動物では最大だという。 ティラノサウルス・レックス(T・レックス)が属する獣脚類に羽毛を持つものがいたことは既に知られている。しかし、その多くは比較的小さな恐竜だった。

「そうした小さな獣脚類の大型の仲間にも羽毛があったかどうかは、はっきりとしていなかった」と、今回の調査メンバーで北京にある中国科学院の古生物学者コーウィン・サリバン(Corwin Sullivan)氏は話す。「軟組織が保存されていることは非常にまれで、どちらだとしてもデータがなかった」。

 今回発見された成体1体、幼体2体の化石によって、大きな獣脚類も羽毛を持ちえたことが明確に示された。羽毛は単純なもので、成鳥の硬い羽毛というよりヒナの軟らかい綿毛に近い。

 新種の恐竜は、ユウティラヌス・フアリ(Yutyrannus huali)と命名された。ラテン語と中国語の組み合わせで、“美しい羽毛の王”を意味する。

◆巨大な“ヒナ”

 1億2500万年前の3体の化石は中国北東部の遼寧省で、白亜紀の同じ地層から見つかった。この地域ではシノサウロプテリクスなど、ほかにも有名な羽毛恐竜が見つかっている。

 成体のユウティラヌス・フアリは体長9メートル、体重1400キロと調査チームは推計している。体重は、同じ科のティラノサウルス・レックスの5分の1から6分の1ほどだが、これまで最大とされていた羽毛恐竜と比べると約40倍ある。

 羽毛の化石は長さ15~20センチで、3体の化石のさまざまな場所に散らばって保存されていた。このため調査チームは、ユウティラヌス・フアリは全身を羽毛で覆われていたものと推測している。

 その大きなサイズと、羽毛が原始的なものであることから、空を飛んでいた可能性は排除されるとサリバン氏は話す。全身を覆う柔らかい毛は体温を保つ助けになったのではないだろうか。

 メリーランド大学の古生物学者トム・ホルツ(Tom Holtz)氏は、「化石で見つかる最も単純なタイプの羽毛で、体が小さく断熱性が重要な動物にみられるものだ」と語っている。同氏は今回の調査には参加していない。

◆何のための羽毛?

 断熱のために羽毛が必要だったのだとすると、いくらか驚きだ。体の大きな動物は通常、体温の保持が極めて容易だからだ。

 ユウティラヌス・フアリが生息していた白亜紀初期の中ごろは、T・レックスがいた白亜紀末期よりも世界的に気温が低かったと考えられている。

 しかしメリーランド大学のホルツ氏は、白亜紀末期のティラノサウルス・レックスやその仲間たちも、暖かい環境だけに暮らしていたわけではないと指摘する。「T・レックスは広い範囲に生息していた。北極圏にいなかったと考える理由はない。北アメリカでは多くが北から南までじつに幅広く活動したので、断熱性のある羽毛のようなものがあれば、すぐにその恩恵を得られたはずだ」。

 現代ではトラが好例だとホルツ氏は言う。「トラはシベリアの森林から東南アジアのジャングルにまで生息している。確かにシベリアトラのほうが毛が長いが、南にすむトラも毛で覆われている」。

 ユウティラヌス・フアリの“原始の羽毛”には、成体を暖かく保つ以外にも機能があったのだとホルツ氏は主張する。例えば、卵を温める際に役立ったのかもしれない。性的誇示やカモフラージュの可能性もある。「これらは並立できる機能だ」。

 今回発見された羽毛恐竜の論文は、「Nature」誌の4月5日号に掲載されている。

Illustration by Brian Choo via Nature

文=Christine Dell'Amore

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