月の裏側の火山活動に新事実?

2008.11.06
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
月の裏側にある「海」と呼ばれる暗い部分。表面にクレーターがあるのが見える。

 このクレーターの数を数えることで、月の裏側ではこれまで想定されていたよりも長く火山活動が続いていたことが分かった。表面に見えているクレーターの数が少ないほど、新しくできた地形だと推定できるという。2008年11月に発表された研究で明らかになった。

Image courtesy of Science/AAAS
 月の裏側では、これまで想定されていたよりも長く火山活動が続いていたことが分かった。 日本の月周回衛星「かぐや」の観測データを基に、火山岩でできた「海」と呼ばれる暗い部分を調べたところ、少なくとも25億年前まで火山活動があったことが明らかになったという。これまで、月の火山活動は約45億年前の誕生直後に始まり、約30億年前には終息したと考えられていた。

 今回の調査では、月にあるクレーターの数から月面の地形ができた年代が推定された。隕石の衝突で形成されるクレーターは、衝突後に地形の変化がなければ地表に現れたまま残っている。つまり、その場に見えているクレーターの数が多いほど、古くから変わらない地形ということになる。

 分析の結果、月の裏側にある「海」の部分には、これまでの予想よりクレーターの数が少ないことが判明した。つまり、従来考えられていたよりも新しい時代に何かが起こってできた地形だったのだ。

 研究を行った宇宙航空研究開発機構(JAXA)の春山純一氏は、「これで月の初期段階における地質学の常識が覆るだろう」と語る。この研究は今週号の「Science」誌に掲載されている。

 月は、地球に火星ほどの大きさの惑星が衝突したときに生まれたと考えられている。誕生してしばらくはマグマ(溶岩)の上に軽量の鉱物が浮いた状態だったが、しだいにマグマが固まって地殻を形成したという。地殻の形成は32億年ほど前には完了したとみられているが、その後も内部のマントルは時折融解し、溶岩となって月面に流出していた。また、別の隕石の衝突が引き金となって噴火が生じていた可能性も指摘されている。

 アメリカのブラウン大学の地質学者で、研究チームメンバーのカーリ・ピータース氏は、「火山活動のほとんどは月の表側で段階的に起こった」と説明する。一方、月の裏側には溶岩が冷えて固まった玄武岩が比較的少ないため、裏側の火山活動は早期に終了したと考えられてきた。

 だが、今回の研究で裏側にいくつかある溶岩の流れた跡(「海」と呼ばれる部分)を調査した結果、裏側の火山活動は従来の予想以上に長く続いていたことが分かった。時折突発的に発生していた可能性があるという。「月の火山活動の歴史が意外に複雑なものだったことは確かだ」とピータース氏は述べている。

 月の表側は地球から見えているので地上望遠鏡でも簡単に観測できるが、裏側を観測するのはこれまで困難な作業だった。だが、2007年に打ち上げられた「かぐや」によって初めて高解像度の画像が得られ、裏側の様子も詳しく把握できるようになった。

 研究では、画像に映し出されたクレーターの数が手作業でカウントされた。そして、いくつかの領域のクレーターを数えることで、いままでにない興味深い成果が得られた。

 アメリカのテキサス州にあるアメリカ月惑星研究所(LPI)のミシェル・カーコフ氏は、この研究を知って次のようにコメントしている。「クレーターの数を数えるというのは信頼性の高い手法ではある。しかし、それを裏付ける試料が得られなければ推測の域を出ないだろう。月の石のような試料を入手するには次の月探査ミッションを待たなければならない。しばらくはこの研究結果が裏付けられることはないだろう」。

 それでも、謎を解明する手掛かり程度であればすぐに得られる可能性がある。「最新式の月周回衛星が日本、中国、インドから打ち上げられており、アメリカも来年4月にはルナー・リコナイサンス・オービタという衛星の打ち上げを予定しているので、今後の調査には期待が持てる」と、ブラウン大学のピータース氏は話している。

Image courtesy of Science/AAAS

文=Anne Minard

  • このエントリーをはてなブックマークに追加