エイプリルフール、いたずらの歴史

2012.03.29
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1900年頃のエイプリルフールの絵葉書。

Illustration from Apic/Hulton Archive/Getty Images
 いたずら好きの人にとって、何世紀と続くエイプリルフールの伝統ほど楽しいものはない。「多くの人は(エイプリルフールは)不快なもので、なくなればいいと思っている」と、カリフォルニア州サンディエゴでWebサイト「ウソの歴史博物館(The Museum of Hoaxes)」の“館長”を務めるアレックス・バーザ(Alex Boese)氏は話す。

「しかし、いたずらが好きな人たちはこの日を心底愛していて、伝統を捨て去る気はない。エイプリルフールを存続させているのはこのような人たちだ」と、バーザ氏は2008年のナショナルジオグラフィック ニュースの取材に対して述べている。しかし同氏によると、米国では近年、家庭や職場で仕掛けられるいたずらの件数は減っており、代わりにメディアによる大規模で組織的ないたずらが台頭しているという。

◆エイプリルフールの起源は謎

 専門家によると、エイプリルフールの起源は謎に包まれているという。

 最もポピュラーな説は、フランスで16世紀に暦が変更され、それまで1年の始まりを春(3月末~4月初め)としていたのを、1月と新年とするユリウス暦に合わせるようになったことが発端というものだ。

 新しい暦の浸透には時間がかかり、地方に住む人の多くは依然として春に新年を祝っていた。こうした田舎の人々を「四月馬鹿」と呼んだのがエイプリルフールの始まりだという。

 しかし、エイプリルフールの起源を研究しているバーザ氏は、「この説は完全な誤りだ」と述べている。「なぜならフランスで公的に1年の始まりとされていたのは復活祭の日であり、したがって4月1日との関連はなかった。伝統的に、その日は公的な1年の初日であるにすぎず、実際にはフランスでは大昔から1月1日に(新年の)お祝いをしていた」。

 代わりにバーザ氏が支持するエイプリルフールの起源は、再生を祝うヨーロッパの古い春祭りだ。そのような祭りでは、いたずらをしたり、他人のふりをしたりすることがよく行われた。

 フランスでは現在、エイプリルフールはプワソン・ダヴリル(四月の魚)と呼ばれており、紙でできた魚を通りすがりの人の背中に貼りつけるのがお決まりのいたずらだ。

◆メディアをだましたエイプリルフールのほら話

 アメリカのユーモアに詳しいボストン大学名誉教授のジョセフ・ボスキン(Joseph Boskin)氏は、エイプリルフールの起源に関してニセの“自説”を披露するといういたずらを仕掛けたことがある。

 1983年、ボスキン氏はAP通信の取材に対し、エイプリルフールは古代ローマ帝国、皇帝コンスタンティヌス1世の時代(3~4世紀)の道化師が起源だと述べた。

 その“起源”とはこうだ。あるとき道化師たちはコンスタンティヌス1世に対し、自分たちの中から選ばれた人間を1日だけ皇帝の座につかせてくれるよう願い出た。

 これを聞き入れたコンスタンティヌス1世は、自身の道化師だったクーゲルにローマ帝国皇帝の座を1日だけ譲った。“皇帝クーゲル”はその日、4月1日を未来永劫「馬鹿の日」に定めると宣言した。

 なお“クーゲル”というのは、ボスキン氏の友人が好きだった東欧の料理の名前だ。

 しかしこのジョークも、一杯食わされたAP通信にはまったく受けなかったとボスキン氏は述べている。「エイプリルフールにぴったりのインチキくさくて、ひねりの効いた話だと誉めてくれるかと思ったのに」。

◆うそと現実、より馬鹿げているのは?

 イグ・ノーベル賞の創設者であるマーク・エイブラハムズ(Marc Abrahams)氏は、エイプリルフールで毎年恒例となっている“うそニュース”も、馬鹿ばかしさでは現実にかなわないと話す。

 イグ・ノーベル賞では毎年、科学や医学、技術などの分野で「人々を笑わせ、そして考えさせてくれる」研究を表彰している。

 2010年度のイグ・ノーベル賞は、遠隔操作のヘリコプターを使ってクジラの鼻水を採取する画期的方法を考案した研究、罵倒の言葉を吐くと痛みが和らぐことを証明した研究、ジェットコースターが喘息治療に効果があることを発見した研究などに授与された。どれも本物の真面目な研究だ。

「現実のほうが、それが現実なだけに、なおいっそう笑える」とエイブラハムズ氏は述べている。「その意味では、現実のおかしな出来事のほうがエイプリルフールの“ジョーク”としては優秀だ。本当のことなのに、人に話すと作り話だと思われるのだから」。

Illustration from Apic/Hulton Archive/Getty Images

文=Graeme Stemp-Morlock

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