熱殺蜂球を形成するミツバチの脳活動

2012.03.19
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実験で針金から吊り下げられたオオスズメバチを取り囲み、「熱殺蜂球」を形成するニホンミツバチの群れ。

Image courtesy A. Ugajin et al, PLoS ONE
 オオスズメバチとの戦いにおいて、ニホンミツバチは文字通り“ヒートアップ”する。スズメバチの周りに群がり、発熱して蒸し殺してしまう。 攻撃中のニホンミツバチの脳内では、ある遺伝子のスイッチが入ることが最新研究によって明らかになった。日本の研究チームが手がけた研究によると、この遺伝子活性は攻撃行動を直接引き起こすわけではないようだが、ミツバチが自分たちの形成する「熱殺蜂球」の熱で死なない理由を解明する手がかりになるかもしれない。

 ニホンミツバチが風変わりな防衛戦略を発達させたのは、彼らの持つ小さな毒針では、体長5センチにも達するオオスズメバチの分厚い外骨格を刺し貫けないためだ。ミツバチが大勢集まって筋肉を震わせると熱が生じ、その熱が捕食者を蒸し殺す。

 これに対し、アメリカやヨーロッパに多く見られるセイヨウミツバチの巣は、スズメバチの容赦ない攻撃に対して無防備だと研究チームは述べている。

「スズメバチが巣を襲えば、(セイヨウ)ミツバチには勝ち目がない。相手に針が刺さらないのだ。スズメバチによって巣は全滅させられる」とアリゾナ大学の神経科学者であるウルフィ・グローネンバーグ(Wulfi Gronenberg)氏は話す。同氏は今回の研究には参加していない。

◆“蜂球”形成中の脳活動を探る

 ニホンミツバチの群れは「熱殺蜂球」の中心を摂氏46~47度という高温状態にし、自らは死ぬことなくその温度を1時間持続させられる。このことは以前の研究で明らかになっていたが、ミツバチの体がこの巧みな芸当をどのように行っているのかはよくわかっていなかった。

 ニホンミツバチの「蒸し殺し」の仕組みを解明するため、研究チームは遺伝子コードと脳構造に着目した。

 研究チームは、ミツバチを蜂球と同程度の高温にさらして、通常と異なる脳内の遺伝子活性を調べた。すると、少なくとも1つの初期応答遺伝子(他の多くの遺伝子の機能を管理する遺伝子)が、ニホンミツバチの脳内ではセイヨウミツバチに比べて大幅に活性化していることが明らかになった。そしてこの遺伝子活性は、脳のキノコ体と呼ばれる領域で生じていた。

 キノコ体は「学習、記憶、および光、味覚、嗅覚など、あらゆる感覚刺激の処理に関与している非常に大きな領域だ」とグローネンバーグ氏は言う。

 また別の実験では、囮(おとり)のオオスズメバチをニホンミツバチの巣内に入れ、ミツバチの脳と遺伝子の活動を調べた。するとやはり、キノコ体の同じ領域で活動増大がみられた。

◆攻撃の潮時を教える遺伝子?

 遺伝子のスイッチが入るのは蜂球の形成開始後であるため、遺伝子が具体的にどんな役割を果たしているのか現時点では不明だとグローネンバーグ氏は言う。しかし、遺伝子活性が蜂球の形成行動に重要な役割を果たしていることはまず間違いない。

「これが蜂球形成の引き金となっていることは考えられない。研究チームは拡大解釈しないよう慎重な姿勢をとっている」とグローネンバーグ氏は述べている。「ただ、これが熱の感知に関与している可能性はある。一種のタイマーのように、(蜂球攻撃)をやめる頃合いをミツバチに教えるシグナルとして機能しているのかもしれない」。

 蜂球に関する研究論文は、3月14日付で「PLoS ONE」誌に発表された。

Image courtesy A. Ugajin et al, PLoS ONE

文=Dave Mosher

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