雷、地球の巨大エネルギー

2012.03.14
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アメリカのユタ州、コロラド高原にあるキャニオンランズ国立公園で激しく踊る稲妻。自然が持つ巨大なエネルギーの一つだ。

Photograph by Markus Mauthe, Iaif/Redux
 世界中の落雷数を合計すると、1秒間に50回とも100回とも言われる。 米国海洋大気庁(NOAA)の雷専門家ドン・マクゴーマン(Don MacGorman)氏は、「一度の雷で大気中に放出されるエネルギー量は、100~3万メガジュールの幅がある」と話す。典型的な規模は1000~5000メガジュールだという。

 映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』では、エメット“ドク”ブラウン博士が雷を利用して車型タイムマシンに電力を供給していた。しかし、巨大な放電現象といえども、人を30年前に運ぶことは難しそうだ。それでも雷が1回落ちれば、平均的な乗用車が290~1450キロ走るだけのエネルギーが生まれる。ガソリン30~144リットルに相当する量だ。

“ドク”ブラウン博士が「1.21ジゴワット」と表現していた雷のエネルギー量は、実際には280~1390キロワット時(kWh)。アメリカの平均的な世帯が使用する電力の9~45日間分に等しい。

 エネルギー量の推定値に幅があるのは、雷の複雑な仕組みが原因だ。まず雲の中で稲妻が生まれ、地表に向かう稲妻の経路が徐々に伸びていく。地表に接すると、巨大な過電流が経路をさかのぼっていく。落雷のエネルギーのほとんどはこの「復帰放電」プロセスで生まれる。人間の眼には一筋の稲妻でも、実際には複数の放電で構成されており、すべてが組み合わさって0.5秒ほど持続する。放電の間隔が開いている場合、稲妻はチカチカと明滅して見える。

 時間は短いが、電圧は最大10億ボルトにもなり、大気は一瞬にして摂氏3万度にまで熱せられる(ちなみに、太陽の表面温度は5500度である)。加熱された大気は急激に膨らみ、衝撃波が生まれる。これが雷鳴として聞こえる音の正体だ。

 雷は人を死に至らしめる威力を持つ。しかし、町を根こそぎ破壊したり、海岸線を変えてしまうなど、雷をはるかに上回る大自然のエネルギーも存在する。例えば、2011年3月11日に日本を襲ったマグニチュード9.0の地震とそれに続く津波は、その恐るべき力をまざまざと見せつけた。世界中の研究者が、地震をはじめ、火山、山火事、ハリケーン、海岸に打ち寄せる波など、各種のエネルギー量を計測しようと研究を進めている。

 人類は既に地熱や風力、太陽エネルギーなどの利用に成功しているが、大自然が秘める力のごく一部分でしかない。

Photograph by Markus Mauthe, Iaif/Redux
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