ダ・ヴィンチの失われた壁画を発見?

2012.03.13
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イタリア、フィレンツェにあるジョルジョ・ヴァザーリの壁画に穴を開け、小型カメラを通して裏の映像を見ている調査チームのマウリツィオ・セラチーニ氏(手前)。

Photograph courtesy Dave Yoder
 16世紀イタリアの貴重な壁画の裏側に、“レオナルド・ダ・ヴィンチの失われた壁画”が隠れている可能性があるという。壁画の裏に高性能カメラを通して調査した結果、大発見に「希望が持てる」初の証拠が見つかった。 チームはヴェッキオ宮殿(フィレンツェ政庁舎)の「500人大広間」を調査し、ジョルジョ・ヴァザーリの壁画「マルチャーノ・デッラ・キアーナの戦い」の裏にもう1つの壁を発見。二重壁の隙間の空洞を小型カメラで撮影した。

 黒い顔料と合成塗料も発見され、失われたレオナルド作品がかなり昔に修復を受けた証拠と見られている。

 調査は現在、政治家や一般市民から激しい抗議を受け中断されており、新発見の信憑性についてはまだ結論が出ていない。しかし、初の興味深い手掛かりであり、4世紀以上に渡るミステリーの解明につながる可能性がある。

 失われたレオナルド作品「アンギアーリの戦い」は、幅6メートル、高さ3メートル以上あると考えられている。

 文献によると、当時の政治家ピエロ・ソデリーニが1502年にレオナルドを呼び寄せ、ミラノ公国軍を打ち破るフィレンツェ共和国軍の騎士を描かせたという。1440年のアンギアーリの戦いの一場面だ。レオナルドはこの機会に油彩の新技法を試したが、失敗に終わったと伝えられている。

 1550年には500人大広間の改築が決定し、ヴァザーリが大型壁画数点の制作を担当した。壁画の1つは、レオナルドの未完の作品に上書きしなければならなかったが、彼の崇拝者だったヴァザーリは手を付けられなかったという話が残されている。

 カリフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD)の美術研究者でナショナル ジオグラフィック協会のフェロー会員でもあるマウリツィオ・セラチーニ氏は、36年前から失われたレオナルド作品を調査している。

 米ナショナルジオグラフィック チャンネルで近日放送予定のドキュメンタリー番組「Finding the Lost da Vinci(失われたダ・ヴィンチ作品の行方)」の中で、同氏は次のように語っている。「調査開始当初から、アンギアーリの戦いが描かれた場所を突き止めるのが目標だった。そこに現存するかどうかもね。まだ証拠は出ていないが、私自身は“ある”と確信している」。

◆失われたレオナルド作品、探せば見つかる?

 レオナルド・ダ・ヴィンチの壁画は行方知れずだが、模写作品はパリのルーブル美術館などに所蔵されている。

 見事な出来ばえではあるが、あくまで模写にすぎずレオナルドのオリジナルではない。巨大壁画を小さなキャンバスに写しており、細かな表現は省略されているはずだ。それどころか、完全に消えてしまった人物もいるかもしれない。

 このためセラチーニ氏ら研究者は、オリジナルの在処の手掛かりを求めて、ヴァザーリの壁画を文字通り上から下まで入念に調査してきた。

 状況が変化したのは1970年代。セラチーニ氏が足場を登って調べたところ、フィレンツェ兵士が掲げる軍旗に「Cerca trova(探せ、さすれば見つかる)」という文字が見つかった。同氏は、一種の暗号であり、ヴァザーリがレオナルドの壁画を隠す新たな壁を築いた事実を示唆すると考えている。

 セラチーニ氏のチームは正式に許可を取り、壁の向こう側を認識できる高周波探知機で500人大広間全体を調査した。結果、文字が見つかった辺りにだけ裏側に空洞らしきスペースが確認されたという。

 実際に壁画の裏を見るため、入念に配置を考えた上で1センチ幅の穴14個を開ける計画を立てたが、プロジェクトの報道を目にした政治家や一般市民から抗議が殺到する事態になった。

◆プランB

 激しい非難の声が上がっていたが、セラチーニ氏のチームは2011年末に1週間だけ調査を続行できることになった。しかし、計画的に14個の穴を開ける当初の手法ではない。

 ヴァザーリ作品のオリジナル部分の損傷を避けるため、既存の亀裂や最近修復した部分にドリルを入れたのだ。

 穴を穿つ場所はほとんどが空洞の外周部だったが、それでも厚さ17センチのレンガ壁の裏側に空洞を確認できた。

 空洞に挿入した内視鏡カメラの画像から、雑に積まれたレンガと絵筆を使ったと思われる痕跡も発見した。

 採取した砂粒のX線分析では、残留する黒い顔料が見つかった。レオナルドの「モナ・リザ」や「洗礼者聖ヨハネ」で使われている茶色の上塗り絵の具に含まれる顔料と成分が似ているという。

 壁の裏から取り出した赤い薄片は合成塗料の可能性が高く、通常の漆喰(しっくい)の壁には付着していない物質だ。

 セラチーニ氏は、ルネサンス期の絵画に直結する発見について、「大発見に希望が持てる」と喜んでいる。しかし、調査期間が短く、サンプル採取が不十分と不満の様子だ。

 同氏はドキュメンタリー番組の中で、「実際に絵の具が見つかるまで、確かなことは何も言えない。次のチャンスをひたすら待つしかないなんて、本当にイライラするよ」と話している。

Photograph courtesy Dave Yoder

文=Dave Mosher

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