プランクトンの群生を3Dでマッピング

2012.02.24
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サルパ類の群生の3D分布図。

Image courtesy Jason Everett, AGU
 ゼラチン質の海生生物の巨大な群生の姿が3Dで捉えられた。この成果を伝える最新の論文は、究極的には生命の開花が海洋中の炭素循環に及ぼす影響についての理解を深める一助となることを狙っている。 2008年に調査クルーズを行った研究チームが、サルパ類の一種の群生の全容を捉えた。サルパとは、クラゲのように透明で樽型の体を持つ動物性プランクトンだ。オーストラリア南東沖では周期的にこのような大量発生が起こる。これはサルパのエサとなる植物性プランクトンが年に1度、爆発的に増殖(ブルーム)するのに呼応している。

 オーストラリアのニューサウスウェールズ大学で研究チームを率いるジェイソン・エバレット氏は電子メールでの取材に対し、サルパの爆発的増殖を探すには春の時期が最適なのは分かっていたとしながらも、「私たちはきわめてラッキーだった。最初に下ろした網から最後までずっと、何千匹というサルパの個体を捕獲できた」と答えた。

 サルパは内臓のほかは透明で目視が難しい。とりわけ今回の研究対象となったホンヒメサルパ(学名:Thalia democratica)は体長が1~10ミリ程度で見えにくい。

 エバレット氏はサルパの群生の中を泳いだ経験を、「ジェリーボール(観葉植物用の高分子ポリマー)で満たしたプールの中を泳いでいる」ようだったと語る。「ひと掻きするごとに、ゼリーの小さな塊に触れる。変な感覚だ。サーフィン区域では波と急流のおかげでサルパにはまずお目にかかれないからね」。

◆ブルームの3D分布図は「画期的」

 この群生を調査するため、エバレット氏のチームはまず水深約50メートルまで網を下ろし、その網を垂直に引き上げて、収穫されたサルパを数えた。

 次いでサルパ捕獲用のトロール網を、さまざまな水深に展開して船で曳航(えいこう)した。

 その次は光学式プランクトンカウンター(OPC)という装置を、海水面から水深120メートルまでのさまざまな深さで曳航した。OPCは小型で、LED電球を用いて水中のあらゆる生物の個体数とサイズ分布を解析する。

 研究チームはOPCを冷水渦の「まさに中心を通って曳航することに、どうにか成功した」。冷水渦は小さな渦を描く水流で、栄養の豊富な水を閉じ込めているため、内部はプランクトンのホットスポットとなっている。「これは画期的だった。そのおかげでブルームの3D分布図を描画できた」とエバレット氏は言う。

 チームは最終的に、冷水渦の中心部で捉えられたサルパの数を、網やトロール網で捕獲したサルパの数と比較した。すると、冷水渦の内部では1立方メートル当たり平均5003匹のサルパの個体が捕獲されていた。冷水渦の端の部分では、1立方メートル当たり約604匹だった。

「今回のクルーズでの捕獲数は、私たちの知る限り、この種について記録されている最高のものだ」とエバレット氏は言う。ホンヒメサルパの個体密度のこれまでの最高記録は1立方メートル当たり約1000匹。

◆サルパの群生の謎は残る

 エバレット氏のチームが最終的に目指しているのは、サルパの群生が発生する条件を、プランクトンのブルームのほかにも正確に突き止めることだ。

「植物性プランクトンも食物として当然必要だ。だがそれだけで自動的にサルパの群生が生じるわけではない」とエバレット氏は言う。「栄養の補給や植物性プランクトンの正確な種類、最適な水温などといった要素」も、群生の発生には必要だという。

「また、そもそも最初の(サルパの)ブルームが起こるには、周辺に少しでもサルパがいなくてはならない(これを「種子集団」と呼ぶ)。無からは何もできないからね」。

 サルパの寿命はわずか数週間なので「群生が死んだ後、このバイオマスがどうなるかにも興味がある」とエバレット氏は付け加える。「サルパはブルームを起こすのも早いが、すぐに養分を使い果たして(死滅して)しまいがちだ。このバイオマスは海底に沈んで行くのだろうか? それとも海中の魚に食べられてしまうのだろうか?」

 その答えが分かれば、炭素が海洋中のどこに蓄えられているかを理解する上で「重要な示唆」になるだろうという。

 ホンヒメサルパの群生に関する今回の研究は、「Journal of Geophysical Research Oceans」誌の2011年12月31日号に掲載された。

Image courtesy Jason Everett, AGU

文=Christine Dell'Amore

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