「IGR J17091-3624」と呼ばれる恒星質量ブラックホール(左)が、連星系を構成する伴星(右)から強い重力でガスを引き寄せている(イメージイラスト)。

Image courtesy NASA/CXC/M.Weiss
 NASAのチャンドラX線観測衛星の観測データから、恒星質量ブラックホールを取り巻く円盤から最高速度の風が吹き出していることがわかった。 超高速の風を吹き出しているのが見つかったのは「IGR J17091-3624」という恒星質量ブラックホールで、地球から2万8000光年の位置にあり、太陽に似た恒星と連星系を構成している。

 恒星質量ブラックホールは、巨大な恒星の崩壊(超新星爆発)によって生まれ、通常の質量は太陽の5~10倍程度だ。

 IGR J17091-3624の周囲には、強力な重力によって伴星から引き寄せられた高温のガスが円盤を形成されている。今回観測された風は、この円盤から吹き出していた。

 記録破りの風は時速3200万キロ(光速の3%)で移動している。これまで恒星質量ブラックホールで観測された風の約10倍の速度であり、恒星質量ブラックホールの100万倍から数十億倍ある超大質量ブラックホールが生成する最大速度の風にも匹敵する。

 研究を率いたミシガン大学のアシュレー・キング(Ashley King)氏は、「宇宙でカテゴリー5のハリケーンが吹き荒れているようなものだ」と話す。「こんな(軽量の)ブラックホールからこれほど強力な風が見つかるとは想定していなかった」。IGR J17091-3624の質量は太陽の3倍程度しかない。

 さらに、もうひとつ想定外の発見があった。ブラックホールを取り巻くガスの円盤から吹き出す風は、ブラックホールが捉えているよりも、多くの物質を外に運び去っている可能性があることだ。

 並行して行われていたアメリカ国立電波天文台(NRAO)の拡大超大型電波干渉計(EVLA)による観測では、この超高速の風が噴出しているときには、通常は見られるブラックホールからの電波ジェット(超高速のプラズマの流れ)がなかった。これは、他の恒星質量ブラックホールの観測結果とも一致し、風の形成によってジェットの発生が抑え込まれることの証拠となるという。

 今回の風速は、2011年にチャンドラが作成したスペクトルから算出された。2か月前に作成した鉄イオンのスペクトルでは、高速風の証拠はなかったため、この超高速の風は噴出したり止まったりしている可能性がある。

 ブラックホール周囲の円盤の磁場が、風とジェット両方の生成に関与していると考えられる。磁場の状況と、物質がブラックホールへ落ち込む速度が、風とジェットのどちらが生成されるかに影響しているはずだという。

 今回の研究は、2月20日に「Astrophysical Journal Letters」誌で発表された。

Image courtesy NASA/CXC/M.Weiss