有毒カエルの皮膚は甘くて苦い?

2012.02.17
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甘い毒? マダガスカルだけに生息するマンテラ属のカエル(資料写真)。

Photograph by Joel Sartore, National Geographic
 一部の有毒カエルは、毒と一緒に糖と胆汁酸を分泌していることが、最新研究によって明らかになった。カエルをじかに舐めることで知られる研究者でなければ、おそらくなし得なかった発見だ。 およそ50年前から、研究者たちは有毒カエルの皮膚をはぎ取り、組織をすりつぶして化学組成を調べてきた。これはもっぱら、薬物に応用可能な有毒成分の抽出のみを目的としたやり方だ。

 しかし、爬虫両生類学者のバレリー・クラーク(Valerie Clark)氏は違う。カエルを愛するあまり、ときにはその体を舐めることもいとわない同氏は、電気技師である父親のウィリアム・クラーク(William Clark)氏とともに、電気刺激によって皮膚腺から化学物質を抽出する機器を開発し、これを使ってカエルを殺すことなく研究を行っている。

「皮膚をはぎ取るのが標準的な手法だ(った)が、この20年間に技術が飛躍的に進歩した」とクラーク氏は言う。同氏は北アイルランドのベルファストにあるクイーンズ大学の博士課程を修了したばかりで、かつてナショナル ジオグラフィック協会研究・探検委員会(CRE)から資金を受けたこともある研究者だ。「われわれの化合物検出、分析感度は大幅に向上しているため、以前よりはるかに少ない試料から、はるかに多くのことが分かる」。

 マダガスカルに生息するマンテラ(Mantella)属のカエルにこの機器を使用したところ、胆汁酸と糖(スクロース)が分離された。これまでカエルの皮膚から見つかったことのないものだ。これらの化学物質は、既存の研究では皮膚がすりつぶされるために「混ざって分からなく」なっていたとクラーク氏は言う。

 化学分析の結果、カエルの皮膚には糖と胆汁酸がほぼ同量ずつ存在し、それらは有毒アルカロイドの量を約10対1の比率で上回ることが明らかになった。

◆なぜ糖と胆汁酸が?

 しかし、カエルの皮膚が糖と胆汁を分泌する理由は依然として謎だ。

 糖は、カエルが餌のアリから得ているもので、これには湿気とカビの多い生息環境からカエルを保護する機能があるのではないかとクラーク氏は推測している。「戦場の兵士たちは、感染症を防ぐために傷口に砂糖をすり込んできた」とクラーク氏は言う。実際、ボストン大学の最近の研究でも、抗生物質の細菌感染に対する効果を糖が高める可能性を示す証拠が見つかっている。

 胆汁酸については、カエルがアリ由来の毒に免疫を持つ理由、また、捕食したアリの毒が、カエルに害を及ぼすことなくカエルの皮膚まで到達する理由を説明するものではないかとクラーク氏は考えている。

「カエルの体を保護しながらアルカロイドを皮膚腺まで運ぶのに、胆汁酸が役立っているということが、いずれ証明されるのではないだろうか」とクラーク氏は言う。「われわれの体内において、胆汁酸は薬品成分の排出に役立っている。胆汁酸によって薬品成分は腎臓へ運ばれ、そこで除去される。カエルの場合、胆汁酸は(有毒成分を)皮膚へ運んでいる可能性がある」。

◆苦い薬

 胆汁酸の研究で約50年の経験を持つカリフォルニア大学サンディエゴ校の生理学者アラン・ホフマン(Alan Hofmann)氏は、有毒カエルの皮膚から胆汁酸が見つかるのは今回が初めてではないかと述べている。

「通常、胆汁酸は消化管の外へ出ることはない」とホフマン氏は言う。同氏は今回の研究には参加していない。

 ほかに胆汁酸を排出することが知られている生物は、ヤツメウナギだけだ。ヤツメウナギの場合は、胆汁酸を化学的コミュニケーションの手段であるフェロモンとして使用しているとみられる。

 ホフマン氏によると、有毒カエルの場合、胆汁はすでに毒を持つカエルのもう1つの“武器”となっている可能性があるという。胆汁酸は「猛烈に苦い」ため、捕食者を遠ざける役割を果たしていることが考えられるのだ。

 熱帯に生息する有毒カエルの皮膚分泌物に関する今回の研究成果は、1月30日付で「Journal of Natural Products」誌オンライン版に掲載されている。

Photograph by Joel Sartore, National Geographic

文=Dave Mosher

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