衛星LARES、相対性理論を検証へ

2012.02.14
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フランス領ギアナにあるESAのギアナ宇宙センターで打ち上げ準備中のLARES衛星。

Photograph courtesy Stephane Corvaja, ESA
 欧州宇宙機関(ESA)は2月13日、新型「ベガロケット」の初号機打ち上げに成功した。アルベルト・アインシュタインの一般相対性理論を検証するイタリアの衛星「LARES」が搭載されており、100倍近い費用を要したNASAのミッションよりも高精度のデータが得られる見込みだ。 開発期間40年以上、8億ドル(約620億円)を費やしたスタンフォード大学率いるNASA「重力探査機B(GP-B)」ミッションは、2000年代半ばに「フレーム・ドラッギング効果」を検出した。地球の自転に伴い時空が引きずられる現象で、一般相対性理論で予言されていたものだ。

 しかし、技術的な問題により、誤差20%程度の精度でしか測定できなかった。

 費用1000万ドル(約7.7億円)のイタリアの新衛星「LARES」では、性能の向上が期待されている。「誤差1%の精度を達成できれば、桁違いに改善される。実現には自信がある」とミッション責任者でイタリア、レッチェにあるサレント大学のイグナチオ・チウフォリーニ(Ignazio Ciufolini)氏は話す。

 LARESはフランス領ギアナにあるギアナ宇宙センターから、現地時間13日午前7時(日本時間午後7時)に打ち上げられた。高度約1450キロの軌道投入にも成功し、フレーム・ドラッギング効果に関するデータ測定を数年にわたって続けることになる。「Laser Relativity Satellite(レーザー相対性衛星)」が正式名で、古代ローマ時代の異教の守護神「ラレース」にちなんでいる。

 アメリカ、インディアナ州ブルーミントンにあるインディアナ大学の理論物理学者アラン・コステレッキー(Alan Kostelecky)氏は、「設計上の感度を達成できれば、一般相対性理論の素晴らしい実証になるだろう」と語る。同氏はLARESチームには参加していない。

◆“ミラーボール”衛星

 受動型衛星LARESはディスコの“ミラーボール”にそっくりの外観だ。タングステン合金の球体で、直径わずか36センチだが重さは360キロもある。

 表面は金属製リフレクターで覆われており、地球を周回する間に、地上に置かれたレーザー測距ステーションの国際的ネットワークがミリ単位の精度で位置を追跡する。

 LARESの地球周回軌道は、赤道に対して一定の角度で傾いている。チウフォリーニ氏のチームが相対性理論に基づき計算した結果、地球による時空の歪みに引きずられるため、LARESの軌道面がゆっくりと歳差運動(自転軸の回転運動)をすると予測している。

 軌道面の自転軸はコマの首振り運動のように角度を変えるが、1年間ではわずか100万分の数十度程度だ。フレーム・ドラッギング効果のみが作用した場合、自転軸が完全に1回転するには1000万年ほどかかる計算になる。

 しかし、距離にすれば1年間で4メートルの移動になり、レーザー測距システムが誤差1%未満の精度で測定できるという。

◆一般相対性理論の検証はこれからも続く

 1450キロ上空の大気抵抗は極めて小さいが、無視はできない。しかし小さい割には重い機体なので影響を受けづらいという。また、丸い形は太陽光の放射圧の影響もほとんど受けない。

 他の影響として考えられるのは、地球が完全な球体ではない点などだ。そのために歳差運動は大きくなり、3年程度で1回転するという。

 研究チームはさまざまなデータ分析技術を利用し、以前のミッションのデータも組み合わせてフレーム・ドラッギング効果の測定値を導き出す予定だ。

 最終的に、一般相対性理論は実証に耐えるだろう。いつかは破られると考えられているが、それは量子物理学が扱うような極めて微小なスケールでの話だ。

「しかし、科学に“絶対確実”はない。一般相対性理論は100年近く、あらゆる実験で見事に確かめられてきたが、検証は今後も続けるべきだ」とチウフォリーニ氏は語っている。

Photograph courtesy Stephane Corvaja, ESA

文=Davide Castelvecchi

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